ネイティブアプリ(App storeやGoogle Playからダウンロードできるようなアプリ)のメリットの一つは、プッシュ通知ができること。そのためにアプリを開発する、ということもあったかもしれません。
しかし、それはもはや過去の話!?今では、アプリを使わなくてもプッシュ通知が可能になってきています。今回は、2016年になって賑やかになって来た「WEBプッシュ」について紹介して行こうと思います。なお、WEBプッシュは「ブラウザプッシュ」と呼ばれることもありますが、ここではWEBプッシュという表現に統一します。
そもそもWEBプッシュとは?
WEBサイトからプッシュ通知を配信する技術のこと
WEBプッシュとは、WEBサイトからプッシュ通知を配信する技術のことです。サイト閲覧時に許諾を得たユーザーに対して、ブラウザを開いていない状態でも、アプリのプッシュ通知と同じように通知を配信することができ、例えば、更新通知やキャンペーン情報などをタイムリーに知らせることができます。
有名なところでは、Facebookがこれを取り入れており、スマホに専用アプリをインストールしているようなヘビーユーザー以外の、PCやモバイルサイトでFacebook利用している人にもプッシュ通知を送ることができるようにしています。
上のようなメッセージが表示された経験がある方も多いのではないでしょうか?これは、プッシュ通知を受け取るための事前許諾を求めるもの。現在FacebookからWEBプッシュ通知を受け取っている方は、このメッセージが表示された際に「許可」を行ったということになります。
WEBサイトへの呼び戻しにも効果あり!?
WEBサイトへユーザーを呼び戻す方法は、これまで「メール」しかありませんでした。しかし、会員サービスがあるようなサイト以外で、メールアドレスを集めるのは困難。そもそもメールを送っても見てもらえないという現実もあります。そこで、スマホユーザーの増加に伴い、キャンペーン情報などをすぐに顧客へと知らせることができるプッシュ通知が、メールに変わる強力なデジタルマーケティング手法となってきたわけですが、独自のアプリ開発が必要になるため、中小企業には取り入れにくい施策でした。
しかし、WEBプッシュなら、アプリ開発をすることなく更新通知などを送ることが可能。スマホであれば端末の上部に、PCであればタスクバー周辺に表示されるポップアップなどで、ブラウザを開いていない人にも情報を伝えることができます。
そのメリットをまとめると以下のようになります。
- サイトにブラウザでアクセスしてきた人に自動的に通知の許可を求めることが可能
- 「許可」は1タップ(クリック)するだけ。メールアドレスなどの入力が不要
- 許可を得れば、ブラウザを閉じていてもスマホ(Android)やPCに直接通知可能
- ユーザーは特別なアプリケーションの起動は不要
- WEB標準技術によって実現されているので利用しやすい
このように、WEBプッシュの強みは、今までにはない手軽さでユーザーの承諾(許可)が取れて、目立つ形でタイムリーに情報を配信できるということです。
技術的な注意点と実際の導入状況
以上のように、便利で期待が持てるWEBプッシュ機能。ただし、現状では対応ブラウザが限られているという課題があります。Chrome、Firefox、Operaなど対応ブラウザは増えていますが、シェアの大きなものでは、Microsoftのブラウザが非対応。IEは既に開発を終えていますので、Microsoft Edgeでこの機能が備わることに期待したいものです。
また、配信が可能なChrome、Firefoxでも、それぞれVer.42、 Ver.44以降が対応という条件があります。これらは自動更新されるブラウザですので、それほど気にする必要はないかもしれませんが、バージョンアップされていない場合は利用不可となることには注意が必要です。またChromeについては、配信元になるWEBサイトをSSL化させておく必要があります。このように、非常にブラウザに依存した機能になっています。
ちなみに、このWEBプッシュがChromeの機能として発表されたのは2015年春のこと。Microsoft系のブラウザが非対応ということもあってか、その後あまり盛り上がっていませんでしたが、2016年に入ると一転して活気づき、様々なツールも登場しています。その理由としては、スマホユーザーに向けての機能と割り切った使い方が広がって来ていることが大きいと考えられます。
現時点ではまだiOSが対応したという情報はなく、iPhoneユーザーに配信できないという問題はあるものの、ブラウザのSafari自体は対応済み。早晩可能になるだろうという予測もあっての盛り上がりなのかもしれません。
導入しやすいツールは盛りだくさん!
WEBプッシュ機能の開発は、オリジナルで行ってもそれほど高額にはなりませんが、設計コストやブラウザの更新のたびにチェックをするといった手間を考えれば、既存のツールを使う方が手っ取り早いかもしれません。以下に、主要なツールを紹介していきます。
pushnate
比較的早くからあるツールで、Chrome、Firefoxに対応しています。無料で使うことができるので、まずはどういったものか試してみるのにも良さそうです。
https://pushnate.com/
参考:ブログ「Webプッシュマーケティング研究所」
この分野の理解を深め、最新情報を得るのに役立ちます。
Push7
AndroidとPC版のChrome、Firefoxへのプッシュ配信が可能な無料サービスです。Mac版のSafari対応も準備中のようです。中高大学生の開発チームで話題の株式会社GNEXによるもので、APIの提供やWordPressといったCMSでの自動プッシュ、あるいはプッシュ通知のA/Bテスト機能など興味深い開発を続々予定しているとのことです。
https://push7.jp/
bpush
Chromeのプッシュ機能実装が発表されたすぐ後、2015年春に開発された日本での先駆け的なツールです。PC、AndroidのChromeに対応し、無料で提供されています。システムのライセンス販売も行われていますので、これをカスタマイズして自社のサイトに組み込むという使い方もあります。
https://bpush.net/
プッシュさん
Android版のChromeから提供が開始されているサービス(発表時のアナウンスではPCにも対応予定とのこと)。もともと「Growth Push」というアプリ用のプッシュ通知サービスを行う株式会社シロクによるもので、これまで培って来たプッシュ通知に関するノウハウが詰まっているというポイントもあります。無料で利用できます。
https://pushsan.com/
PushCrew
海外製のツールで、日本での提供は2016年2月から開始されています。PC版のSafariやAndroidブラウザにも対応しています。
http://www.pushcrew.jp/
Pushdog Owned
RSSから更新情報を自動で取得してプッシュ通知。WordPress、はてなブログ、Amebaブログなど、全てのブログサービスに対応しています。また、WEBページの差分から更新を検知することもでき、RSSがないWEBサイトでも導入可能です。
https://push.dog/owned
Browser Messenger
広告代理店の株式会社大広が中心になり提供するサービスで、管理画面なども充実しています。ただし、初期費用が必要で、月額利用料もやや高めです。
https://browser-messenger.net/
このようにかなり多くのツールが出てきていますが、プッシュ配信機能はブラウザの仕様に則って開発されるため、大きな差別化はしにくく、上で紹介した各ツールも今のところ大きな差は見られません。ほとんどのサービスの基本的な実装方法は、ソース内にコードを記述するだけなのですぐに導入できます。
プッシュ通知の課題と効果
プッシュ通知の活用にあたって大きなポイントとなるのが、いかにユーザーに許諾をしてもらうか、ということです。この点はアプリでも同じですが、WEBプッシュ機能は一般的にはまだ認知されておらず、通知の許可を求める案内表示もブラウザの機能による無機質なもの。許諾してもらうのはアプリよりさらに難しいかもしれません。ここをいかにクリアするかが、ひとつの課題になるでしょう。
また、WEBプッシュにどれほど効果があるのかについては、ビジネス活用の事例がまだそれほど多くないためハッキリしていないというのが実情。対象ブラウザに制限があることに加え、メッセージ受け取りの許諾が、ユーザーからどれくらい得られるのか…なども未知数です。そんなこともあって、サービス提供者側も、利用を無料にして様子を見ているというところだと思います。
その意味では、今はチャンスと言えるかも…。ツールが無料で手軽に使えるこの時期にいずれかのサービスを使ってみて、ブラウザのプッシュ通知とはどういったものか、そもそもプッシュ通知が自社にどれぐらい有効なのかなどを、試してみてはどうでしょうか。
今回のまとめ
- アプリをインストールさせることなくプッシュ通知を配信できる「WEBプッシュ」機能が盛り上がりを見せている。
- まだ対象となるブラウザやOSに制限があり事例も少ないので、実際の効果は未知数。
- 無料で利用できるサービスがたくさんある今、まずは試してみるのも一手。
上手く活用できればサイトへのリピート訪問を促し、集客効果を高めることも期待できるWEBプッシュ。ご紹介したツールを活用すれば導入自体の壁は低いので、ぜひ積極的に活用してみてはいかがでしょうか?