ホームページの企画や運用にあたっては、よく「利用者目線で」とか「ユーザーニーズに合わせて」という言い方がされますよね。そこを重視しているという企業は多いと思います。しかし、様々な調査を見て行くと、実際には企業と消費者の認識にはかなり大きな“ズレ”が存在しているようなのです。
そこで今回は、ユーザーは企業サイトをどう見ているか?何を重視しているのか?など、その意識を知る手掛かりとなる調査データを集めてみました。あなたのサイトは、ユーザーの意識やニーズとかけ離れたものになっていないでしょうか?頭に浮かべてチェックしながら、読み進めてみていただければと思います。
多くのサイトの情報は、消費者の関心から遠い!?
最初にご紹介するのは、Adobeが実施した「消費者行動調査2016」で報告されているデータ。今回のテーマを考えたきっかけにもなったものです。企業のWEBサイトの情報が、「関心から遠い」と回答した消費者は、なんと8割以上。しかも、「(情報は関心から遠いと感じることが)よくある」という回答だけで34.6%もあるという、かなり深刻な結果になっています。
Adobeはこの解決方法として、「情報のパーソナライズ」をあげています。もちろん、多様なニーズのすべてに応えることは難しく、それもひとつの有効な解決方法なのですが、その前に企業主主体、販促優先のコンテンツを作ってしまっているのではないか…と、振り返って見てはどうでしょうか?
特に、コンテンツマーケティングに力を入れていこうと考えている中小企業では、提供しようとしているコンテンツが本当にユーザーニーズに沿ったものか、今一度考えてみることが大切かもしれません。企業内だけでは客観的な判断が難しいので、対象層へのヒアリングや閲覧者アンケートを実施するなど、外部の意見に冷静に耳を傾けてみることも大切だと思います。
データの出典:「Adobe?Digital?Marketing?Discovery?消費者行動調査2016」
http://www.adobe.com/jp/news-room/news/201603/20160310_consumer_survey.html
強い会員登録への抵抗感。囲い込み戦略には再考が必要?
次に取り上げるのは中小ECサイトに関する調査ですが、他業種でも会員登録などで「囲い込み」をおこなっている中小企業には、ぜひチェックしておいていただきたいデータです。
「消費者は会員登録を嫌がっていない」と考える担当者の割合は49%で約半数。これに対して、「会員登録することにまったく抵抗がない」と答えている消費者は、たったの4%に過ぎません。これだけ大きな意識の隔たりが明らかになる、ということはなかなかありませんから、これは非常に貴重なデータだと言えます。
その背景をさらに探っていくと、ユーザーは「入力の手間」のために会員登録を嫌がっているのではなく、「会員登録をすること」自体に心理的抵抗があるのだと思われます。この調査では、「中小ECサイトへ会員登録する際の抵抗感」という質問もされていますが、「なんらかの抵抗あり」という回答は96%にも上ります。
これが大手の有名ECサイトだったとしたら、抵抗感の割合はもっと下がるはず。もちろん、中小企業と大企業では消費者から見たイメージは違うということは担当者にもよく分かっているはずなのですが、WEBの上のことになると、なぜか規模の大小は関係ないという感覚になりがちなようです。そこは、注意したいところです。
さらに別の設問では、生年月日や電話番号など「会員登録時に正確な情報を入力しない」という回答が実に6割近くもあります。認知の少ない中小サイトへの情報登録は、それだけ心理的負担があるということでしょうか。新たな囲い込み戦略を生み出すか、もし会員登録をさせたいなら、ユーザーの心理的なハードルを下げる何らかの取り組みを行うようにする必要がありそうです。
データの出典:中小EC企業向け2016年EC戦略白書
(JECCICA 一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会)
http://jeccica.jp/post-1954/
ユーザーは、予想以上にセキュリティ対策を重視している
次もECサイトに関する調査ですが、これもWEBサイト全般にあてはまる内容だと思いとりあげました。ユーザーはサイト選びで、セキュリティを非常に重視していることが見えてきます。商品価格とほぼ同じ割合ということですから、そこにどれだけ高い関心があるかが分かるでしょう。
さらに、別の設問からは、サイトの信頼性の判断材料としても、セキュリティが非常に重視されているということがわかります。
中小企業も、情報漏えいや不正アクセスなどへのセキュリティ対策には力を入れていると思いますが、社内のセキュリティには留意していても、外部サイトの対策が同じ水準で行われていない、というケースはよく見られます。
ECサイトや会員制サイトに限らず、一般サイトでも資料請求や問い合わせの受け付けなど個人情報のやり取りは発生します。ユーザーに安心を与えるセキュリティ対策は、今や必須の取り組みだといえるでしょう。
出典:直営ECサイト利用ユーザーの「ECサイト利用実態調査」
(GMOペイメントゲートウェイ)
http://gmo-payment-gateway.com/lpc/ig/
エントリーフォームへの反応には男女で違い!?
入力フォームの最適化は、コンバージョンに近い部分の取り組みだけに、多くのサイトが力を入れている部分。スマートフォンからの閲覧や操作が増えたこともあって、それに合わせた最適化もかなり図られていると思いますが、そんなEFOについて面白い調査データがあったので紹介します。
フォームを画面の使いやすさなどのUIでなく、性別というセグメントから調査したものです。フォーム入力を途中でやめた経験、イライラした経験、いずれも男性のほうが多いという結果になっています。男性は機能、女性は手間の少なさに利便性を感じる傾向があるようです。
WEB担当者がメインユーザーと同じ性別、年齢であるということは案外少ないもの。そこに決裁者の意見も加われば、さらに遠くなっていく可能性もあります。ユーザーにとって最適なものは?という想像力を持ち、できればユーザーテストまでおこなって、最適なフォームを提供していきましょう。
データの出典:【性別】で見る!フォーム入力におけるユーザーの傾向
https://f-tra.jp/blog/data/2562
検索結果では、表示順位よりもタイトル内容が重視されている
最後にとりあげるのは、検索結果として表示された一覧の中からどのサイトをクリックするかを決める時に、何を重視するかについて調べたものです。
ユーザーは、検索結果に表示された「サイトのタイトル」や「要約文」を、訪問先を選ぶための決定材料にしています。もちろん、そのことはご存知だと思いますが、意外なのは、それが検索結果順位よりも遥かに重視されているということです。
検索結果の上位に表示されているかどうかを気にする人が14%なのに対し、サイトのタイトルがニーズに合ってそうかどうかで決める人は45%と半分近くにも上ります。これは意外に感じる人も多い数字ではないでしょうか?
ちなみに、「サイトのタイトル」や「要約」として表示される内容は、SEOの基本となるmetaタグのtitleやdescriptionの記述によって決まります。コンテンツには表示されない記述ということもあって、検索エンジンばかりを意識したものを考えてしまいがちですが、ユーザーにとっても大切な情報になっていることを忘れずに、内容を適切に伝える見出しや要約を作っていくようにしましょう。
データの出典:1,000人アンケートで分かったユーザーの検索行動の真実(プロモニスタ)
https://promonista.com/searchbehavior-research-2015/
今回のまとめ
- 企業サイトの情報は関心から離れていると感じているユーザーが多い。特に、コンテンツマーケティングを重視する企業は提供する情報の見直しを。
- 中小企業サイトでの会員登録には拒否感が強い。囲い込み戦略は熟考していく必要がある。
- ユーザーは予想以上にセキュリティ意識が高く、それを信頼性評価の尺度としている。
- EFOは画面上のUIだけでなく、性別も踏まえて考えるとより有益なものができそう。
- 検索エンジンからの訪問を増やすために、metaデータの記述も見直しを。
いかがでしょうか?ユーザー視点に立っているつもりでも、意外と企業視点になってしまっていることは多いもの。ご紹介したデータを、見直しの参考に役立てていただければと思います。