企業と各ステークホルダー間のコミュニケーションが重要視されるようになって久しくなりました。これまでデジタルなコミュニケーションのみで完結していたそれらも、最近では「Webからリアルへ!」と、ひと昔前の視点からすれば、「逆流」のような現象が活発に見られるようになってきました。
その最たるものが企業が主催するオフラインでの「イベント」です。
時には既存顧客とのエンゲージメントを強化するため、あるいは見込み顧客への接点として、また採用活動の一環として、日々多様な企業イベントが開催されていますが、実はこのイベント運営にはさまざまな障壁が存在します。
そうしたイベント運営を「申込受付」「名簿作成」「メール配信」「アンケート集計」等の面で支援するのが【EventCreate】(イベントクリエイト)です。
また【EventCreate】は2014年にサイボウズ社とサービス連携を行うなど各企業からも注目されていますが、Netsket社はイベントの告知面をサポートする【everevo】(イベレボ)や集客面でサポートする【everevo ADs】などのイベント周辺サービスもリリースされ、まさにイベント支援の一気通貫サービスを提供しています。
しかしなぜ同社はWebサービスとしての「イベント支援」に注目するのでしょうか?今回は「株式会社Netsket」芥川 武代表にお話を聞きました。
【EventCreate】の現状
――まずイベント支援サービスは他社からも提供されていますが、【EventCreate】の強みや独自性はどのような点にあるとお考えでしょうか?
EventCreateは、競合のサービスに比べて下記の点で独自性・優位性があります
・参加者情報などはお客様独自のデータとして管理される安全性
・既存のウェブサイトに溶けこむようなデザインの構築が可能
・その他、法人・団体のイベント管理運営に必要な様々な細かい機能群
――【EventCreate】のプロモーションは具体的にどのように進められていますか?
集客面でのプロモーションは、現在Webサイトからのお申込と、販売パートナー経由のお申込みが多いです。
社員数数千人の大手企業から、自治体、公益法人、大使館、外資系メーカー、学校、ベンチャー企業、個人事業主など、様々なお客様にご利用いただいています。
――どのような利用シーンが多いのでしょうか?
自社開催セミナーの一般向け申し込み受け付け管理や、会合の出欠管理、パートナー向け展示会、ボランティアの受付、社内セミナーや懇親会の受付、オンラインセミナーの申し込み受付など、「申込が必要でその後のコミュニケーションが発生する様々な業務」で利用されています。
また【EventCreate】のアンケート機能のみを利用するケースもあります。
「イベント支援」というビジネス
――Netsket社では【EventCreate】や【everevo】をはじめイベント関連のWebサービスを開発されていますが、「イベント運営の支援」というサービスに着目されている理由はなんでしょうか?
学生時代にサークルの代表をしていた関係で、よくイベントの企画運営などに携わっていました。そのためイベント関連のノウハウが自分の中で蓄積されていることも理由として挙げられます。
また元々パソコン少年だったのですが、インターネットブームの中でLinuxのようなオープンソースコミュニティの成立に興味を持ち、大学の卒論では「サイバーコミュニティ」と題して、オープンソースコミュニティをモデルに次世代のコミュニティのあるべき姿について論じました。そのため当時から、「いつか何らかのコミュニティ生成の助けになるサービスを作る」と決めていました。
その後、twitterやFacebookといったソーシャルメディアが普及する過程で、個人や企業が気軽にイベントを告知・集客できる環境が整いました。そうした中、多くの人々のリアルなコミュニティ運営に寄与するサービスを作ろうという思いで【everevoや【EventCreate】を作りました。
コモディティ化するWebサービスとは?
――最後に、Netsket社は00年代の初頭からさまざまなWebサービスの開発・運営に携わっておられますが、その観点から現在および今後の「Webサービス」全体への展望などお聞かせください。
今後のWebサービスの展開は2極化していくと考えています。
つまり、
・最新のIT技術を使った最先端サービスを、最先端の領域の人々に対して提供するサービス
・最新のIT技術を使った最先端サービスを、一般の領域の人々に対して提供するサービス
という2極化ですね。
現在のWebサービスは一時的にコモディティ化していくプロセスにあると認識してます。そのため前者よりも後者の「一般の領域の人々」へのサービスが求められていくと考えています。
今後は多くのWebサービスは「水道」「電気」のような、利用者の技量を問わないものとなっていくはずです。
インタビューを終えて
芥川氏の「Webサービスがコモディティ化していく過程」という指摘は、例えばフリマアプリ「メルカリ」の台頭を念頭に置くとイメージしやすいのではないでしょうか。
これまでも「ヤフオク!」のようなCtoC間で売買を行えるサービスは存在しましたが、オークション形式など独特なところがあり、「誰でも/簡単に」という点ではやや障壁が存在したのは事実です。
ですが「メルカリ」では、出品に関する手間をスマートフォンの各種機能をフル活用することで最小限に抑え、PCを持たないライト層でも文字通り「誰でも/簡単に」利用できる環境を実現させています。そうした利用環境には最先端の技術が組み込まれているわけですが、利用者はそれを意識することなくWeb上でのCtoC取引を楽しんでいます。
ある意味「企業イベントの企画/運営」もこれまで一部の大企業とPR会社の専売特許だった部分があります。そうしたイベントの「コモディティ化(一般普及)」を【EventCreate】をはじめ関連サービスがより大々的に担っていくことになれば、企業をはじめ私たちの「イベント」が大きく変わる可能性がありそうです。