日本でも注目度が高まり、今年は本格化するのではないかと言われているネイティブ広告。でも、話題先行気味で、理解度もまだ十分とは言えないのが実情です。ましてや国内事例となると、かなり限られてしまいます。今回は、そんな中から、貴重な事例として「クレアラシル」の展開を取り上げてみたいと思います。冒頭でご紹介するアメリカの調査データも興味深いですので、ぜひご覧ください!
なお、ネイティブ広告のネの字もわからない…という方は、「5分でわかる!ざっくり知りたいあなたのための、ネイティブ広告の基礎知識」で、ネイティブ広告とは何か?という基礎をまとめています。よろしければ合わせてご覧ください。
ネイティブ広告の理解度は、アメリカでもたったの3%!?
事例紹介の前に、ひとつのデータをご紹介しましょう。下のビジュアルをご覧ください。「ネイティブ広告を十分に理解している」という人はたったの3%、約半分の人は「まったく知らない」という数字です。
SEOJapanで紹介されているインフォグラフィックス
実はこの数字、米国の有名コンテンツマーケティングブログ「コピーブロガー」が、読者を対象に行った2014年春の調査によるもの。WEBマーケティング先進国と言われるアメリカで、何らかの形でウェブマーケティングに関わっていると推測される人(2000人以上)が参加した調査だけに、この低さはちょっと驚きです。
注目度は高まっているけれども、実際の理解はまだまだ進んでいない……。それが、ネイティブ広告の現状だと言えそうです。
クレアラシルの展開に学ぶ、実践的ネイティブ広告
では、クレアラシルの事例紹介を始めましょう。クレアラシルと言えば、みなさんもきっとご存知ですよね。ニキビケアとして圧倒的なブランド力を誇る治療薬です。でも、実は、そんなイメージも今や昔。最近の十代における認知度は大きく低下し、何と、クレアラシルは歯磨き粉だと思っていたというユーザーも多い状況になっていたのだそうです。
キャンペーンの失敗から新しい取り組みを模索
それに向けた対策は2013年から行われ、ユーザー投稿型の「言わせてクレアラシル!」というキャンペーンを実施。ところが、残念ながら期待を大きく下回る結果となってしまいました。そして2014年には、その失敗から新しい取り組みを模索するという展開が始まります。
結果分析から導き出されたのは、「ターゲットとなるティーン層は、広告に対して警戒する」という事実。2013年のキャンペーンではバナー広告をメインにした流入施策を取っていたそうですが、そこが上手くいかずキャンペーン全体が不発に終わってしまったことがわかりました。そして、それを解決するために取られたのが、「面白いコンテンツを提供する」という方法。十代に支持される「カゲロウプロジェクト」とコラボしたキャンペーンを、2014年に展開しました。
エンゲージメント重視のやり方に変更
それだけであれば、「単にターゲット層に人気のジャンルとコラボした企画」と見えるかもしれませんが、このキャンペーンではエンゲージメント(好きになってもらう)を重視。効果指標もTwitterのツイート数としたという点が興味深い変化です。
その変化は流入元にも関係してきます。前年には広告バナーからの流入が低調だったことを受け、今の十代がまわりの人や友人、グループ、特にリーダーや影響力を持つ存在にはよく耳を傾けるという点に着目。そして、ツイート数の増加と共に、それをきっかけとした認知につなげていくという戦略に転換。結果として、飛躍的なツイート数の伸びとなったそうです。また実際の売上でもEコマース上では約2倍の伸びを示したということから、プロジェクトは成功という評価になったということです。
クレアラシルに学ぶ、実践的ネイティブ広告
教科書的に言えば、クレアラシルの事例は完全なネイティブ広告とは言えず、むしろコンテンツマーケティングに分類されるべきかもしれません。クレアラシルのマーケティング担当者もこれがネイティブ広告と呼ばれるものかどうかは意識してなかったそうで、他からの後付の評価でこう呼ばれるようになったようです。
しかし、クレアラシルの展開にはネイティブ広告との関わりが強い次のようなポイントがあります。
- 広告するのではなく、面白いコンテンツを提供するという方針で企画。
- エンゲージメントを重視。効果指標をツイートの数にした。
- 広告からの流入ではなく、ソーシャルメディアでの接点を重視した。
これらは、今後、ネイティブ広告に取り組んでいくうえで大いに役立つ考え方です。また、ネイティブ広告そのものを目的化したのではなく、戦略を考えていった結果、このような手法に行きついたというプロセス…それが大きな成功要因だったのではないでしょうか。この点も、ぜひ見習いたいポイントだと思います。
今回のまとめ
常に変化への対応が求められるWEBマーケティング。でも、急ぐことはありません。手法などの表面的なものは頻繁に変わっても、基本となる考え方さえきちんと持っておけば、適切な対応を行っていくことができるはずです。ネイティブ広告についても、クレアラシルの考え方とプロセスから学べることは多いのではないでしょうか?ぜひ、参考にしてみてください。
※今回の記事中で、クレアラシルの展開に関する内容は「宣伝会議」の2014年12月号を参考にしました。