グラフィックソフトやマーケティングツールでなじみの深いアドビシステムズが、最近ある調査結果を発表しました。「消費者行動調査2014」と題したこの調査は、「WEBサイトなどのデジタルメディアが、消費者の購買行動にどのような影響を与えているか」を調べたもの。商品の認知や情報収集、納得などのためにWEBサイトの重要性が以前にもまして高まっている一方で、「問題があるWEBサイトでは、62.6%が購買行動や情報収集を中止する」ということもわかりました。
ユーザーは、どのようなサイトを「問題サイト」だと感じているのでしょうか?そして、その改善のポイントは?調査データを基にしながら、ユーザーの実態や本音を探ってみたいと思います。
利用者の期待に添えないWEBサイトは、チャンスを失う
まず、ひとつの調査結果をご紹介しましょう。調査項目「問題があるWEBサイトが消費者の行動に与えた影響」では、グラフ(アドビシステムズのレポートを元に作成)のとおり、実に62.6%が、問題があると感じたサイトで商品の購入や情報収集を中断したことがあると答えています。
商品の購入や予約、資料請求、あるいはその場で直接購入とはならなくても将来につながるかもしれない情報収集…。広告やSEOなど、コストや手間をかけて誘引した見込み客が、せっかくそのような行動に至りながらも、WEBサイト上でのマイナス経験によって半数以上が中断してしまうというのは大きな損失です。WEBサイトのコンテンツやUI(ユーザーインターフェイス)の重要性をあらためて認識させられる数字ではないでしょうか。
WEBサイト上でのユーザーのマイナス経験とは?
以上のような数字を見ると、では「WEBサイト上でのマイナス経験」とは具体的にどのようなものを指すのか…、と気になってくると思います。これに関しては、「問題があるWEBサイトの経験状況」という調査項目があり、複数の経験についての「よくある」「たまにある」「まったくない」という三つの選択肢での回答が集計されています。ここでは、それを大きく4つに分類してみました。各項目の数値(%)は、「よくある」「たまにある」を合算したネガティブな回答を合算したものです。
UI(ユーザーインターフェイス)の問題
「詳細な商品情報のリンク切れ 74.8%」
リンク切れをなくすことは基本中の基本。しかし、その経験者が7割以上あるというのは問題です。「WEBページを新しくつくっていくことにばかり熱心で、過去のものは気にしない」「WEBページの規模が大きすぎて、リンクチェックが行き届いていない」など理由は様々だと思いますが、必ず改善しておきたいポイントです。
大手サイトに限らず、最近では中小企業でも複数サイトを利用するケースも増えており、運営が追い付いていないという状況も見られます。ツールなどもうまく利用して、こまめなリンクチェックができる体制づくりは欠かせません。
デザイン上の問題
「デザインに統一感がない 70.2%」
雑誌などの紙媒体と違ってリンクによってページ移動していくWEB上では、突然ページの雰囲気が変わると利用者は強く戸惑います。URLの確認などはしないことも多い一般ユーザーは、「違うサイトに行かされたのでは?」などと不信感を持ってしまうこともあります。もちろん、利用者への配慮を欠いた会社というイメージで見られてしまうことも大きなマイナス。ビジュアルデザインだけでなく、UI全体の統一感は非常に重要です。
コミュニケーション上の問題
「問い合わせなど必須の機能がない 65.5%」
WEBサイトは情報の一方的な提供の場ではありませんから、コミュニケーションを取る手段が提供されていないとユーザーは不便だと感じてしまいます。コンタクト手段を提供しているサイトは増えていますが、今でも半数以上の人がそうした不便を感じた経験があると回答しています。
問合せなどの機能がないサイトは、顧客志向でない印象を与えることはもちろん、何か問い合わせを受けることができない特別な理由があるのではないか…と勘ぐられることもあるかもしれません。ぜひ、改善が必要なポイントです。
コンテンツ上の問題
「ページによって情報が矛盾 64.8%」
「古い情報が残っていて混乱 72.4%」
「他のメディアと情報が矛盾 61.5%」
前の二つは、自サイト内のこと。きちんと対応しておきたいものです。担当者が変わっても同じ情報、関連した情報が載っているページを把握できるよう、コンテンツリストなどドキュメントとして残しておくのが良いでしょう。合わせて、サイト内検索などで、定期的なチェックを行うのも必須です。
年度変わりや、商品やサービスの変更時などには特に入念なチェックや注意が必要です。また、調査結果からは、ユーザーはWEB以外のメディアとの内容の矛盾についても、厳しい目を持っていることがわかります。会社や商品トータルでの情報発信管理が非常に重要だと言えそうです。
ユーザーがWEBサイトを魅力的だと感じる機能
次は角度を変えて、WEBサイトの魅力を高めるためのヒントとなる質問項目「WEBサイトが備えていると魅力的に感じる機能」の結果について見てみましょう。
やはりユーザーは金額に敏感
「とても魅力的に感じる」「やや魅力的に感じる」というポジティブな選択肢の合計でいくと、「オプションなどを含め見積もれる」が最も高く評価されていました。ユーザーはやはり金額が気になるようです。業種やサービス内容によってはなかなか対応が難しい場合もあるかもしれませんが、そのような場合でも目安をシミュレーションさせながら、問い合わせを喚起するなどといった仕掛けはプラス要因になりそうです。
クーポンの効果は低いのか?
意外と評価が低かったのが「クーポンなど最新情報の通知」ですが、これはよく使われる定番的手法のため、ユーザーがクーポン慣れしてしまっているということが大きい気がします。必ずしも効果がないコンテンツというわけではないはず。むしろ、クーポンの中身や提供方法の工夫で魅力を高めることが必要だと言えるのではないでしょうか。
リコメンド機能は精度がカギ
最も評価が低かったのは「履歴を基にしたオススメ」です。リコメンド機能に関しては、確かにユーザーインタビューなどでも「必要ない」という声が多く聞かれます。しかしこれも、その「精度」がカギではないでしょうか。例えば、かつては精度が低いと言われたamazonのリコメンドも目に見えて向上しています。レコメンドは望んでいないというユーザーでも、精度が高ければ、実は無意識のうちにこのような情報に頼っているという側面もあるのではないかと思われます。
このように、数値だけで評価するのではなく、インサイトを重視して隠されたニーズも読みとりながら、調査結果をぜひサイトの魅力向上に役立ててください。
今回のまとめ
問題があるWEBサイトは、ユーザーの離脱原因となる。その事実を数字で裏付けたこのデータは、継続的な改善や日頃のチェックをしっかり行うことの大切さを再認識させてくれたのではないでしょうか?また、表面的な数字だけではなく、そこから消費者インサイトを深めることも大切です。「消費者行動調査2014」の結果レポートをご覧になりたい方は、以下の参考サイトから資料請求が行えます。
<参考サイト>
- 企業のWebサイトなどデジタルメディアが消費者の購買行動に及ぼす影響が大きいことが判明(アドビ・プレスリリース)
http://www.adobe.com/jp/news-room/news/201502/20150202_JapanConsumerResearch.html - Adobe Marketing Cloud 消費者行動調査2014(要申し込み)
http://offers.adobe.com/jp/ja/marketing/landings/_002794_discovery_consumer2014.html