2015年のWEBマーケティングにおける一番の注目ワードになる、という声も少なくないコンテンツマーケティング。インバウンドマーケティングの一環として、また最近では企業広報などでもコンテンツマーケティングへの注目は高まっています。
一足早くこの手法が広まったアメリカでは、様々な事例も生まれ、より活発な議論が行われていると言います。しかし、日本では「コンテンツマーケティングはSEOのためのもの」という風潮が見られるのは大変残念なことです。実際のコンテンツマーケティングは、集客だけでなくそこからのナーチャリング、そしてコンバージョンにこそ意味があります。今日は、そのプロセスについてまとめておきたいと思います。成果を左右する大切なお話ですので、ぜひ、最後までお読みください。
「SEO対策のためにコンテンツ」という提案には注意
WEB系のニュースサイトなどを見ていても、アクセスランキングの上位にはSEO関連の記事が目立ちます。これを見ても、SEOがWEBマーケティングで高い関心を持たれていることがわかります。そんな中で、Googleの精度が上がり、不正な外部リンクが厳しくチェックされるようになった最近のSEOの傾向として、「良質なコンテンツを数多くつくることが大切です」「コンテンツマーケティングこそがSEOに最適です」という言い方で提案が行われるケースが増えているようです。
これは間違いとは言えないかもしれませんが、コンテンツマーケティングの中の「集客」というごくわずかな部分だけに偏った考え方です。非常に残念なことに、日本ではこの傾向がさらに強くなってきているように思われます。本来的にはコンテンツマーケティングもインバウンドマーケティングと同じようにプロセスとして捉えるべきもの。取り組むのであれば、ぜひ、正しい認識を持って始めていただきたいと思います。
ということで、以下に正しいステップについてのお話を進めます。
コンテンツマーケティングのステップとゴール
少し教科書的な話になりますが、コンテンツマーケティングのプロセスの全体像を、まずはひととおり整理しておきましょう。
・集客
まずは集客です。この段階ではSEOが中心になりますが、それはユーザーが自ら検索という行動によってその情報を得るということ、つまり主体的に「見つけてもらう」ことが重要だからです。物事は「第一印象が肝心」と言われますが、ユーザーとの接点となるこの最初のプロセスで「役に立つ」「自分のためになる」と思ってもらえる良質なコンテンツを提供することは、非常に大切な最初のステップになります。
・ナーチャリング(育成)
ユーザーがコンテンツと出会い、接点が生まれたら、コンテンツ提供者はそこからナーチャリング(顧客への育成)を行っていかなければなりません。「単に情報を欲していた」最初の状態から、「より深い情報が欲しい」「この会社についてもっと知りたい」という期待の感情を持つように働きかけ、「ユーザー」と呼ばれていた潜在層を顕在的な「見込み客」へ、そして有望顧客へと「育成(=ナーチャリング)」していくのです。
ただコンテンツを増やしているだけか、戦略に基づいてコンテンツを制作、配置しているかの違いは、このステップで現れます。いくらアクセスを集めても、ここがうまく機能しなければ結果にはつながりません。
・コンバージョン
そこからさらに、ゴールとしてのコンバージョン(購入や予約、資料請求、来店など)に導いて初めてコンテンツマーケティングが「成功」したことになります。最初は潜在ユーザーであった訪問者が、この段階まで来て顧客となるのです。
以上、ごく概要だけの説明になりましたが、この大きな流れこそがコンテンツマーケティングの基本です。さらにはその後、リピーターとしてファンになってもらうことや、コンバージョンの後にソーシャルメディアなどで顧客自身に評判を広げてもらうことなども、加わってきます。コンテンツマーケティングは、必ずこのようなプロセス全体で捉えることが大切です。
コンテンツマーケティングを始めるべきかの見極め
単なる集客策として考えるのではなく、以上でご説明したような一連の流れ、つまりは「戦略」を組み立てていくことこそが、コンテンツマーケティングの醍醐味であり、肝でもあります。そこに本気で取り組む覚悟がない場合や条件が整わない場合は、ただ流行だからとコンテンツマーケティングに取り組むことはおすすめできません。
向かない場合、やっても成果が出ない場合もある
また、どんな商品やサービスにもコンテンツマーケティングが合うということではありません。どちらかと言えば、コンバージョンまでに一定の時間をかけて検討されるものが向いています。さらには、特徴やセールスポイントが明確でなければ効果は期待できません。自社の商品やサービスのどこを探っても独自の強み、つまりはUSP(ユニークセリングポイント)がないという場合には、残念ながらコンテンツマーケティングを行っても成果は出にくいでしょう。
始める前に、しっかりと見極めを
そういう場合は、広告媒体に力を入れるといった選択の方が、即効性があって効率的なことも少なくありません。まずは自社がコンテンツマーケティングを行うべきか否か、成果を出せる可能性があるかどうかを冷静に判断することは非常に重要です。その上で行うと決まれば、まずUSPを明確にし、次にそれに沿った戦略を立てていく…、このWEBマーケティングの王道ともいえるプロセスがコンテンツマーケティングの出発点になります。
コンテンツマーケティングは顧客を絞り込む手法
ここまで戦略立案の重要性を強調してきましたが、その際に特に重要になるのが対象顧客の絞り込みです。大量のコンテンツをつくって、それによって多くの人を呼び込むことがコンテンツマーケティングだ…そんなイメージを持つ方もよく見かけますが、実際はその逆です。コンテンツマーケティングはまず「狙うターゲットを絞る」ことから始めます。
例えば整体院の場合を例に上げてみます。「猫背を矯正する技術に特に自信があるので、そうした悩みを持つ客層を取り込んでいきたい」などと具体的な対象者をできるだけ絞り込み、そこに最適なコンテンツを提供します。
この場合、集客の際にSEOで狙うキーワードは「猫背 整体」「猫背 治し方」などになってきます。周辺にある「整体 肩こり」「整体 腰痛」などは思い切って候補から外すくらいの意識が必要です。
コンテンツ計画はプロセス全体で考える
ペルソナ×プロセス、そしてコンテンツへ
ターゲット選定で登場するのが、WEBの世界でもお馴染みのマーケティング手法「ペルソナ」です。ペルソナでは年齢や性別などの基本属性に加え、リサーチに基づいてかなり具体的なライフスタイルや性格までを設定。最終的には名前を付けて、まるで実在するような顧客像を完成させ、その人のためのコンテンツを検討していきます。例えば「高田さん(ペルソナ)はこのコンテンツを見ても、猫背が治せるとは思わないのではないではないか?」などという具合に、考えていきます。
個々のコンテンツを考える前に、ペルソナをどのようなコンテンツマーケティングのプロセスへと組み込んでいくか、つまりはいかに集客し、育成し、コンバージョンに持っていくかというプロセスの中でコンテンツを考えていきます。さきほどの「猫背の矯正に強い整体院」の場合を例にして考えてみましょう。
ペルソナ:
高田美佐さん(28歳・女性・会社員)
最近猫背を指摘され、悩み始めている。心配性。サプリメントやダイエットなど、美容には関心が高い。新しいことを始めるのには慎重で躊躇しがち。
想定シナリオ:
01.猫背が気になり始めたのでその原因を検索。ある整体院のブログを見つける。
02.そのブログで、猫背の原因に<スマホのし過ぎ>を発見。高田さんはスマホのヘビーユーザーのため、自分もこれではないかと思い始める。
03.ブログをさらに見ていくと猫背が<さまざまなトラブルを起こす>ことを発見し、心配になる。
04.また、猫背が思っていたより美容に大きな影響を及ぼすと知り、解消しなければ…と、考えるようになる。
いかがでしょうか?最初は単に猫背が気になり始めていただけの高田さんは、コンテンツに接していく中でそれを解消する意欲を高められてきました。上記事例は、まだ育成ステップの途中まででしかありませんが、ここから更にプロセスを進め、来院となって初めて成功と言えるのです。
コンテンツもプロセスから考える
コンテンツマーケティングでは、カスタマージャーニーとも呼ばれるこうしたプロセスを練った上で、実際のコンテンツ検討を開始していきます。
例えばコンテンツマーケティングの代表的なメディアとしても使われるブログ。手軽に始められる手法ではありますが、まずブログという手法ありきの取り組みでは成功は遠のいていきます。コンテンツマーケティングとして取り組み、成果を目指すのであれば、しっかりとプロセスを考えてから始めるようにしてください。
今回のまとめ
- コンテンツマーケティングはSEOのための取り組みではない。集客→ナーチャリング(育成)→コンバージョン→更にその先へと続くプロセス。
- コンテンツマーケティングには合う・合わないがある。導入すべきかの見極めが重要。
- コンテンツマーケティングでは、何よりも戦略が重要。自社の商品やサービスを見つめ直し、USP(強み)を明確化することから始める。
- ペルソナを設定し、コンバージョンに至らせるまでのストーリーを描いた上で、具体的なコンテンツ検討に入っていく。
今回は、コンテンツマーケティングの全体像について駆け足でご説明してきました。集客という狭い視野で考えるのではなくプロセスとして捉え、確かな戦略の上に、それに最適なコンテンツを展開させていきましょう。そして、着実な成果を目指していただきたいと思います。
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