みなさんは、A/Bテストを実施されたことはありますか?WEBマーケティングの強みの一つに、テストマーケティングを行いやすいということが挙げられますが、「A/Bテスト」はその代表的な手法です。例えばWEBサイトやランディングページ、メルマガなどの制作や運用にあたって、より効果の高い表現を判断するために利用されます。
中小事業者の方々にとっては、A/Bテストと聞けば、やや敷居が高い印象もあるかもしれません。しかし、最近はとても取り組みやすくなっています。そこで今回は入門編として、A/Bテストとは一体何ぞや?という基本の話、そして実施することでどういった成果がもたらされるのか?などについて、お話していきたいと思います。
WEBマーケティングの定番テスト手法、A/Bテストとは?
「A/Bテスト」とは、2つ以上の異なるパターンのクリエイティブを用意して実際にユーザーに公開。その反応優劣を比較して、最適な形を導き出していく手法です。国内外を問わず数多く行われているもので、海外ではCVRが336%も向上したという事例まで報告されています。
やり方を、事例のかたちで説明してみましょう。
<テストテーマ(例)>
トライアルセットの申込みを目的とするスキンケア通販のランディングページ。
ここでは、キャッチコピーを変えた二種類のページを用意して、どちらが効果的かをテストしてみます。
<テスト結果(例)>
CVR(コンバージョンレート)
Aパターン:26%
Bパターン:38%
10%以上の差をつけて、Bパターンが勝利しました。
このスキンケアブランドはテスト結果に基づいて、Bパターンのキャッチコピーを採用して、ランディングページを展開していくことになります。
上記は説明のための事例ですが、「美肌」や「美しい女性」をイメージさせるコンセプトのAパターンでいくか、「悩み」を全面に出し「40代以上の女性」などとターゲットを絞った打ち出し方のBパターンにするかは、実際の化粧品通販などでもかなり迷うところ。それならばダイレクトにユーザーに聞いてしまおう、というのがA/Bテストなのです。
コンセプトと連動するキャッチコピーは、LPを作成する上で非常に議論になることが多く、A/Bテストがよく実施されます。他にも、クリックボタンの表現や、メインビジュアルのテストなどが行われることもあります。
従来は手軽に実施できなかったA/Bテスト
テストマーケティングを導入しなければ、多くの場合、WEB担当者の推測や、主観や好みで表現が決められてしまいます。しかし、テストを行えば根拠を持って判断できます。これにより大変効率的なWEBマーケティングが可能になり、結果も良くなることが期待できます。しかし、それにもかかわらず、大手サイトなどを除いて、これまでA/Bテストがあまり広く行われてこなかったのには次のような理由があります。
クリエイティブ制作にコストがかかっていたこと
WEBページの制作料金が安くなってきているとはいえ、複数パターンのページ用意するのは中小の事業者にとってはコスト負担が気になるもの。ボタンや写真、テキストといった部分的な変更をしただけの簡単なA/Bテストでも、コスト意識が働いてブレーキをかけてしまっていたというのが現実ではないでしょうか。
ツールがあまり無かったこと
また、A/Bテストを行うには、比較材料となる複数パターンを出し分けていくツールが必要です。以前はこれが大変少なく、あっても比較的高価なものがほとんど。それも実施の障壁になっていました。しかし最近では、安価なものが増え、トラフィック数によっては無料で使えるものまで出てきており、ぐっと敷居が低くなっています。
A/Bテストによる改善事例
ここからは、もう少し具体的なイメージを掴んでいきましょう。WEB上に公開されている、A/Bテストの事例をいくつかご紹介します。
事例1:定期購入申し込みのランディングページ
まずは、A/Bテストツールと分析で定評がある「KAIZEN platform Inc.」のブログに掲載されていた、国内の解かりやすいテスト実施事例を紹介します。実施企業は「ネスレ日本株式会社」です。このテストにより月間の売上が数億円規模で大幅に改善されたそうです。
この事例で目指すゴールは定期購入の増加ですが、特典の表現の仕方を変えたパターンを作成してテストが実施されています。この段階でCVRが8%向上したとのこと。
その後もさらに、継続して微調整とテストを繰り返すことで、成果を上げていったとされています。非常にオーソドックスなテストですが、一度結果が出た後も、良かったパターンをさらに改善していったことが、さらなる成功を呼んだ大きなポイントと言えるでしょう。
事例2:コンテンツ配信数の向上
次は、世界的に有名なA/Bテストツール「optimizely」で報告されている事例です。この事例で使われたメディアは「Ustream」。改善のゴールは、より多くのコンテンツ配信を実現することで、ボタンのテキストとアイコンの組み合わせを変更してのテストが実施されています。
このようにA/Bテストでは、申込みボタンなどパーツ部分の比較テストも頻繁に行われます。特にコンバージョンに直結するような箇所の実施は大切です。
事例3:結婚相談比較サイトのコンバージョン改善
役に立つWebマーケティングツールや情報の提供で知られる「ferret」で紹介されたA/Bテスト事例です。資料請求や予約がゴールとなっている結婚相談所の比較サイトのトップページで、メインイメージについてのテスが行われています。
このケースでは、コンバージョンが上がらない要因は直帰の多さであるという分析が予めされており、それを改善する事でコンバージョン・アップも図れていくだろうという仮説があって実施されています。また、春に実施ということで季節感を盛り込むことでも向上が図れるのでは?という意図も含まれています。
なおこの事例は3パターンですが、このようにA/BテストはさらにCパターン、D、E・・・と複数で細かな要素とその組み合わせを変えて実施していくこともできます。こうすることでユーザーに「響いた要素」と「組み合わせ方」を特定していくことができます。
なかなかA/Bテストが始められない理由
3つの事例から、A/Bテストの重要性、またそれをどうやれば良いかというイメージはつかんでいただけたのではないかと思います。しかし、それでもなお、今後も行えそうにない…という方も多いかもしれません。最後に、そのような場合に推測される理由と対応について、少しだけまとめておきましょう。
WEB担当者に知見がない。
A/Bテスト未経験者の場合、よくわからないという理由から実施しようとしない場合が多くあります。しかし踏み出さない事には、何も始まりません!また改善案の方が結果が悪かったら困る、恥ずかしい、という声を耳にすることもありますが、全く気にするべきものではありません。ユーザーにとって何が最適かは推測だけでは分かりません。だからこそテストをするのです。予想と違う結果が出ても、恥じる必要は何もありません。それも一つの結果、大きな成果です。
どのツールを選べば良いかわからない。
ツールはたくさん出てきましたが、選択肢は増えれば増えるほど逆に迷ってくるもの。各ツールそれぞれの特色もありますので、その判断基準をどこに置くかは、確かに悩ましいところでしょうか。そこは、情報を集めたり、実際に試用したりしてみるしかありません。検索してみると、ある程度までなら無料で利用できるツールも見つかるはずですので、まずは手軽なところから、感触をつかんでみる、というのも一手かもしれません。
今回のまとめ
- 「A/Bテスト」とは、異なるパターンの表現を用意し、ユーザーの実際の反応によりその優劣を比較するテスト手法のこと。
- キャッチコピー、クリックボタン、ビジュアル表現など様々な比較が可能。担当者の主観や好き嫌いではなく、データからより効果的なものを選択、改善できる。
- 手軽に利用できるツールも増え、中小企業でも利用しやすくなってきている。
これまで、A/Bテストが気になっていながらできていなかったという方は、きっと少なくないと思います。この記事を、やってみようかな…というきっかけにしていただければうれしいです。A/Bテストの経験が無いからと不安な方に向けてのハウツーなども交えながら、実際のツール紹介などについても、また別の機会を設けて書いていきたいと思います。