有益なコンテンツを用意して、まずは「ユーザーに見つけてもらう」ことから始めようというインバウンドマーケティング。しかし、インバウンドマーケティングだからと言って、見つけてもらうのを待つばかりでは前に進みません。ナーチャリング(顧客育成)からコンバージョンまでの過程では、ユーザーへのアプローチ、つまり「プッシュ型」のコミュニケーションも大切です。
実は、その代表格のツールとして使われているのは、いまも健在の「メルマガ」だということをご存じですか?メルマガは終わった…などと思っている方、ちょっと待ってください。今日は、根強いマーケティングツール、メルマガを取り上げてみたいと思います。
メールは誰もが利用できる万能ツール
変化が早いインターネットの世界にあって、その草創期から変わらずに存在しているのがメールマガジン、いわゆる「メルマガ」です。例えばRSSなど、ポストメルマガと言われるものも登場しましたが、結局、メルマガに取って代わるほどの存在にはなりませんでした。
RSSが思ったほどに普及しなかったのは、「理解しにくい」「RSSリーダーなどが必要になる」と言った障壁があったからです。一方のメルマガはと言うと、インターネットを使う人ならほぼ全員がメールソフトを設定。導入障壁がほとんどなく、送受信さえできれば基本的には文面を読むことができる環境が整っています。こうした手軽さにより、幅広い年代で、またITリテラシーの高低に関わらず利用できる万能ツールとして、メルマガは今に続いているというわけです。
さらに、公的サービスなども含めた様々な連絡や通販の注文確認などにも、メールは日常的に利用されており、生活になくてはならないものになっています。そのため、誰でもが必然的に使い慣れているのです。
メルマガは、特徴のあるオウンドメディア!
ところで、意外と意識されていないのですが、メルマガは事業者が運営する「オウンドメディア」です。オウンドメディアというとWEBサイト上のコンテンツを指すと思われがちですが、「顧客に対して自らが主体となって発信する情報メディア」という意味では、メルマガも立派なオウンドメディア。しかも、同じオウンドメディアとしてWEBコンテンツと比較してみると、次のような独自の特徴を持っています。
特徴1・プッシュ型のメディア
最も大きな特徴は、メルマガは「プッシュ型」だということ。通販サイトから届くメルマガを思い出していただけばわかるように、顧客に購買行動を促すなどの働きかけを積極的に行うことができます。これは、情報が更新されていても、ユーザー自らが訪問しなければ気づかれないWEBコンテンツとの大きな違いであり、メルマガならではの強みでもあります。
特徴2・キュレーション型メディア
また、一回ごとに完結するメルマガは、事業者側が伝えたい内容を厳選し、編集したもの。その意味では、ある種の「キュレーションメディア」だとも言えます。コンテンツの魅力こそが、メルマガの開封率や反応率を上げていく大きなポイントだと言えるでしょう。
優れたキュレーターのまとめサイトが人気を得ているのと同じく、良質な情報がピックアップされ上手く編集されたメルマガは人気があります。
特徴3.ターゲティング可能
さらに、メルマガが持つもう一つの重要な特徴は、比較的簡単に「ターゲティング」ができること。メルマガ配信では、ユーザーの志向に合ったセグメント分けをして情報を提供するしくみが整備されており、セグメント分けの工夫で、メルマガの反応率が大きく変わってきた…という事例は、たくさんあります。これもメルマガの特徴だと言えます。
メルマガの強み
これまでに書いた特徴と重なる部分もありますが、ここでメルマガの強みをあらためて整理してみましょう。主に次の8つに集約されます。
- あらゆる年代、リテラシーの高低に関わらず使える
- 事業者側が厳選した情報をプッシュ型で伝えることができる
- セグメントを分けて、ターゲティングできる
- 獲得した配信メールアドレスは、事業者の情報資産となる
- 売上が見込める
- 費用対効果が良い
- 効果測定ができる
- 保存ができる
1から3についてはすでにご説明したとおりですが、プッシュ型という点について、アプリとの比較について補足しておきましょう。スマホなどのアプリのプッシュ通知も、多くの企業で反応率が高い傾向があり、現在のところ有効なものだとされています。しかし、まずアプリ自体をインストールしてもらわなければならないというハードルがあり、その企業やブランドのコアなファンが使うアイテムという位置づけになってきています。さらには、アプリそのものの開発、運営費も高めで、まだ中小企業でも手軽に使えるというまでには普及していません。これらの点から、メルマガとは少し違う位置づけにあると言えます。
4から7までの項目には高い関連性があります。現在のメルマガはオプトインのみで、送る際にはユーザーの許諾が必要。配信のメールリストは事業者が保有する情報資産となり、新しいサービスを行う際などにも活用することができます。また既存顧客含む事が多いメルマガの配信対象者は、広告で新規で集めて来た顧客よりも反応が良く、配信用のASPツール使用料などを除けば基本的には広告費もかかりません。つまり、費用対効果が極めて高い手法だと言え、効果測定を行うことによって改善に取り組んでいけば、さらに効果を高めていくことも可能です。また、あまり意識されていませんが、簡単に保存できるという点も、媒体としてのひとつの特徴だと言えます。
メルマガの弱み
ここまでの説明だけを読めば、いいことづくしのようなメルマガですが、もちろん弱みもあります。それについてもまとめておきましょう。
- 登録障壁が高い
- 運用に手間がかかる
- 情報の拡散は期待できない
- 反応率は昔に比べれば圧倒的に低くなっている
1から3は主にソーシャルメディアとの比較です。ユーザーにメルマガの購読をしてもらう、つまりリスト収集のためには、一定の取り組みの手間や時間、費用がかかります。また、リコメンドされた情報が自動配信されるような本格的なシステムを持たない限り、ある程度運用の手間もかかるメディアでもあります。
さらには、情報の拡散という点ではソーシャルメディアに圧倒的に軍配が上がります。この点は、そもそもの役割が違うので、メルマガに代わるメディアとしてソーシャルメディアをとらえるのではなく、それぞれの価値や役割をきちんと把握して使い分けていくようにしたいものです。
最後に、メルマガの反応率が昔に比べて大きく落ちたのは明らかです。インターネット上でこれほど多くの情報発信が行われ、リアルのサービスや商品の購入にもネットが大きな影響を与える現在。競争が激化して、ユーザーに選ばれなくなったメルマガが出てくるのもまた当然の流れだと言えます。
今回はオウンドメディアとしてのメルマガについて、あらためてまとめてみました。強みと弱みを把握して、ぜひメルマガを有効に活用してみてください。
今回のまとめ
- メルマガは誰でも読める受信の障壁の低いメディア。ただし、リスト収集までの登録障壁は高い
- プッシュ型でターゲティングも可能。それを独自の特徴とするメディア。
- 拡散力は弱い。ソーシャルメディアとの価値や役割の違いを把握し、使い分けることが重要。
コンテンツの編集力が問われるという点では、WEBメディアもメルマガも同じですが、それに加えてメルマガでは、その独自の強みを特に意識した取り組みが必要になります。その具体的な方法についても、続編としてあらためて紹介していきますので、ぜひまた、インバウンドブログを覗きに来てください!