オウンドメディアを立ち上げてコンテンツマーケティングを実施する。あるいはWEBサイトの制作や運営、リニューアルを行う。そんな時に、「手法論を考える前に、しっかりとした戦略を立てることが大切だ」と、よく言われますよね。しかしながら、中小事業者の場合、ガッチリとした本格的な戦略構築をする予算も時間も人手もない…というのが実情ではないでしょうか。また、無理をして、そこまで本格的に取り組む必要もないと思います。
最低限必要な要素に絞って明確化し、素早く戦略をまとめるために…。今日から3回に分けて、中小事業に特化したWEB戦略構築について考えていきたいと思います。では、さっそく最初のステップ、「準備、分析」から始めます。
分析には、フレームワークを活用しよう
戦略立案のための準備・分析段階では、フレームワークを有効活用しましょう。フレームワークとは、いわば戦略を立案していくための型のようなものですが、それを用いることのメリットとして、次のようなものがあります。
- 考えるスピードが速くなる。
- 物事を多くの角度から網羅して、全体的に捉えることができる。
- 考える、考慮すべき点のもれが無くなる。
- 他者への説明がしやすくなる。
- 立ち返るものがある。判断の基準になる。
特に、「他者への説明がしやすくなる」という点が重要です。中小事業者の場合、「自分自身がトップなので他を説得する必要がない」「承認を得る上司がそういった理屈を好まないので必要がない」などというケースも多いものです。
しかしここでの他者には、代理店やWEB制作会社なども含みます。WEBサイトを制作する場合にはヒアリングが行われると思いますが、その際にきちんと戦略をベースにした要望を伝えることで、より効果が出るサイトを作ることができます。また、判断基準も明確になります。例えばデザインを確認する時にも、好みなどの主観と併せて、組み立てた戦略に合っているかどうかで判断できます。あるいは実際に運用を始め、効果検証を行う際にも、ただPVだけを追うなどということではなく、上手くいっているポイントや逆にそうでない課題などを、同じく組み立てた戦略に照らし合わせ検証することができます。
押さえるべきフレームワークは2つ
ところで、フレームワークと言っても、例えばネットで「戦略フレームワーク」と検索してみると、実に多くの種類やテンプレートなどが出て来ると思います。しかし、中小事業者が最低限行っておくべきなのは、そのうちSWOT分析と3C分析2つだけ。いずれもファクト(事実)ベースで行える取り組みやすいものです。
SWOT分析
まずは、「己を知る」ことはとても大切。必ずやっておきたいのが「SWOT分析」です。あまりにも有名なフレームワークですのでご存じの方が多いと思いますが、下記の4つの頭文字から取ったものです。
- 強み (Strengths) 自社の強み
- 弱み (Weaknesses) 自社の弱み・問題点
- 機会 (Opportunities) 外部にあるチャンス
- 脅威 (Threats) 外部にある自社にとって都合の悪い要因
SWOT分析のやり方
内部環境として自分たちの「「強み」や「弱み」をあぶり出し、それに「機会」と「脅威」という外部の要因も加えていきます(右は標準的なフォーマット例)。
事例:ニキビケアクリームの販売会社の場合
- 強み→海外からの輸入、独占販売品。高い効果が実証されている。
- 弱み→知名度が全く無い。医薬品では無い。
- 機会→大人ニキビ市場が盛り上がっている。
- 脅威→大手メーカーの新商品。広告表現規制の動き。
中小事業者がやってしまいがちなこと
弱みばかりを多く挙げてしまいがち。機会や脅威といった外部要因をいい加減にしてしまう傾向も見られるので、しっかりと洗い出しましょう。
3C分析
自分たちのビジネスとそれを取り巻く要素を挙げていくのが「3C分析」。3Cとは、次の頭文字を取ったものです。
- 自社(Company)
- 顧客(Customer)
- 競合(Competitor)
3C分析のやり方
自社(自分たちの事業)、顧客・市場、競合の現状を挙げていきます。あらかじめSWOT分析をしておくことは、ここで、「自社」を客観的に導き出していくベースにもなります(右は標準的なフォーマット例)。
なお、3C分析については、「マーケティングの基本・3C分析を集客サイトの強化に活用しよう!」も参考にしてください。
- 自社→地域ではここのみ存在。エイジングケアのメニューに自信。
- 顧客→来院者の満足度高い。他地域からの訪問はあまり無い。
- 競合→広告費の多い大手が沿線に複数存在。そこにも多くの顧客が流れている。
中小事業者がやってしまいがちなこと
競合を過度に意識しすぎること。また、事実ではなく主観で競合や顧客を出していってしまうことも多いのでデータ等に基づいて客観的に分析しましょう。
「事実」を出しきってから考える
「SWOT分析」と「3C分析」で行われるのは、「事実」を明確にしていくという、いわば現状の客観的な整理。戦略構築における大切な準備作業です。これをしっかりと行って、情報を出揃わせた後で、「考える」というプロセスに入っていきます。いきなり考え始めると、どうしても主観に寄った考えになってしまいます。その意味で、この準備プロセスを経ることはとても大切です。必ず実行するようにしましょう。
また、「SWOT分析」「3C分析」で出て来た情報は「ターゲティング」「ポジショニング」、さらには「セグメンテーション」といった実際の戦略のベースになっていきます。
今回のまとめ
- 現状分析にフレームワークを用いるメリットは大きい。全体を捉え、判断基準をつくる。
- 中小事業者に必須なのは「SWOT分析」と「3C分析」の2つ。
- 客観データをまとめることで、ファクトベースの戦略を組み立てるための準備ができる。
今回は、中小事業者が最低限取り組むべき戦略構築プロセスのうち、準備・分析フェーズについてまとめました。次回はポジショニング等にも簡単にふれながら、実際の具体的戦略立案やコンテンツづくりについて、話を進めていきたいと思います。
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