【準備・分析編】【具体戦略立案編】と続けてきた、中小事業者だからこそ実現したい素早いWEB戦略構築。この3回目は、立案した戦略を実行し始めた後の【検証・改善編】です。
WEBに関わっていると、「検証と改善の継続的繰り返し、そのスピード感が非常に大切だ」とよく言われますよね。今回はまさにそのお話です。効果検証のために設定しておくべき指標や検証の手法などについてまとめておきましょう。日々の仕事を振り返りながら、気づきや見直しのきっかけにしていただければと思います。
意識すべきは「PDCA」
まずはこの図をご覧ください。お馴染みPDCAサイクルです。P(Plan)、D(Do)、C(Check)、A(Action)の継続サイクルは、あらゆる業務の効率を上げるためのいわば仕事の基本中の基本ですが、WEBの運用ではこれをよりスピーディーに回していく必要があります。中でもCheck、つまり検証段階から次のAction(改善)につなげていくことがとりわけ重要です。
練りに練った戦略を実行しても十分な結果が出ないことはよくあること。それ自体は問題ではありません。むしろ、どんどん失敗を重ねるべきとも言えます。優れたWEBマーケターとは、それを正しく検証し、改善できる人のこと。PDCAを繰り返しながら成果を導き出していける存在です。
検証のためにKGIとKPIを押さえておく
C(Check)、つまり効果検証のために欠かせない指標がKGIとKPIです。データがない場合は、まずは仮説でもかまいませんので、検証のために必ず指標を設定しましょう。可能であれば、具体戦略立案段階で合わせて設定しておくことが理想です。
KGI:Key Goal Indicator(重要目標達成指標)
KPI:Key Performance Indicator(重要業績評価指)
KGIとKPIの関係をシンプルに表すと、右のようになります。KGIは全体の目標とすべき最終ゴール、KPIはそれを実現するまでの達成度合いを評価する指標です。KPIは複数ある場合や、階層的に設定される場合もあります。
WEB運用の場合では、例えば次のようなケースが考えられます。
設定事例:営業支援サイトの場合
KGI:資料請求数(の増加)
KPI:訪問数,CVR,直帰率
この場合、最終目標は見込客リストとしての「資料請求数の増加」です。それを実現するためには、まずはサイトへの訪問数の増加が必要になります。これは広告やSEO、ソーシャルメディアを使っての流入数などと紐づきます。もうひとつの指標は、CVR(コンバージョン率)です。流入数が増えてもCVRが減少したのではよい結果になりませんので、これも指標化しておきます。流入戦略とサイトやページがうまくマッチしているかなどが結果を左右する要因となります。また、流入ごとにランディングページが違う場合には、それぞれの直帰率を指標化しておくことで流入戦略がうまくいっているかをより細かく検証することができます。
これらについて、それぞれの目標(あるいは仮説としての)を設定し、検証していきます。KPIは数日から数週間、月単位など細かなスパンで、KGIの達成状況については半期や年間などより長い期間で検証していきます。
詳しくは、「事例でわかる!WEBマーケティングにおけるKPI・KGIの基本」も参考にしてください。
WEBサイトでの検証方法
ここからは、WEBサイトの検証を行う際に、よく利用される方法をまとめておきましょう。
アクセス解析
定番手法としてほとんどのWEBサイトで導入されていながら、意外と使いこなせていない場合も多いのがアクセス解析です。何となくPVや訪問数の変化を見て一喜一憂しているという光景は大規模サイトにおいてさえよく見られるものですが、そのような状態は、WEBマーケター自身が「何を見るべきか」を明確にできていないために起こります。
KPIをきちんと決めておけば、まずどこからチェックしていけば良いかが自ずと分かってきますし、慣れてくれば、そこから何を深堀していけば良いかも見えてきます。それによって成果が出ているかどうかの判断ができ、出ていない場合はその要因に気づくことができるようになります。その意味でも、KPIの設定は非常に重要です。
ヒートマップ
アクセス解析はサイト全体を見ていくのに欠かせないものですが、ページ単位の検証には限界があります。そこでよく使われるのが以前にもご紹介したヒートマップツールです。例えば、LPを作成する時には、いろいろ考えながら戦略的に要素を配置していくと思いますが、それがユーザーに確実に響いているかどうかはアクセス解析では判断できず、ヒートマップツールを使うことにより見えるようになります。
例えばお客様の声は下部に配置されていてもよく見られているのに、上部に配置したサービスのポイントはほとんど見られていないというのであれば、配置を再検討すべき。あるいは、サービスそのもののコンセプトから考え直してみる必要があるかもしれません。このようにヒートマップから得られる情報には、たくさんの具体的改善へのヒントが得られます。
アンケート調査
ユーザーに直接聞く、という方法はシンプルながら非常に有効です。アンケートというと簡単そうに聞こえますが、聞く項目や聞き方をうまく設定する必要がありますので、十分な知見が無い場合は協力会社などに相談しながら行う方がいいかもしれません。サイト内に、各コンテンツへの評価や意見などを吸収できるしくみを常時設置しておくのもいいでしょう。
問い合わせを生かす
問い合わせで記入された自由コメントの中に、思わぬヒントが隠されている場合があります。大規模サイトの場合はその量が膨大になりますのでテキストマイニングツールの導入などが必要ですが、中小規模以下なら内容を一つ一つ読んでいくという対応でも十分でしょう。
また、ここでは具体的には触れませんが、戦略全般を検証していくには広告やソーシャルメディアの効果測定ツールも必要になってきます。さらには、以前紹介したA/Bテストなども盛り込んでおくと、より明確な勝ちパターンの把握が可能になります。
検証から改善へ
上記のような検証方法を用いての評価が完了したら、次はいよいよ最も大切な改善(アクション)に取り組んでいきます。例えば広告の効果がうまく出ないという課題に対しても、訪問数が伸びないことが原因と考えられる場合は広告出稿の増加が必要かもしれませんし、訪問数は目標以上に増えているのにCVRが目標の1/2しか無いというのなら、コンテンツの内容を再考してみるべきでしょう。
このように同じ現象に対しても、推測される原因が異なれば改善方法も変わります。そして、それは正しいKPIの設定に基づく検証があってこそ可能になります。WEB担当者はKPIを確実に設定し、さまざまな検証結果を複合的に見ながら改善のポイントを絞り出していくことが大切です。何も難しく考えることはありません。検証を進めながら、必要に応じて指標そのものの見直しをするなど、柔軟に考えていきましょう。
今回のまとめ
- サイトの運営は常にPDCAを意識して取り組んでいく。
- KGIは全体のゴール、KPIはそのための進捗判断指標。正しい検証のためには設定が必須。
- 改善はさまざまな検証結果を複合的な視点で見て行う。
ここまで、3回にわたってお話してきた「中小事業者だからこそ実現したい素早いWEB戦略構築」。日頃取り組んでいらっしゃる内容も多かったと思いますが、プロセスとして全体を捉え直してみると、新しい気づきやヒントが生まれる場合もあります。より大きな効果を手にするために、役立てていただければうれしいです。
<関連情報>
中小事業者だからこそ実現したい素早いWEB戦略構築1【準備・分析編】
中小事業者だからこそ実現したい素早いWEB戦略構築2【具体戦略立案編】
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