テレビのニュースなどを見ていて、「それは大企業だけの話でしょう」とツッコミたくなること、ありませんか?数の上では日本の企業のほとんどが中小企業だなどと言われますが、私たちが日常的に接する情報は大企業のものがほとんど。これはWEB分野についても同じで、中小事業者の実像を知るための情報や機会はあまり多くはありません。
今回はそうした中から数少ない情報を集め、また中小事業者のWEB活用をサポートしている人たちの現場の声なども通して、中小事業者のWEB活用実態を見ていきたいと思います。他社はどうなのだろう…そんな時に、ひとつの参考にしてください。
意外に高い?WEBへの満足度
まずは、中小事業者のWEB活用状況を数字で見てみましょう。中小企業庁の「2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan(中小企業白書)」から、データをご紹介します。
ホームページ開設は、ほぼ一巡
最初に掲載するのは、「中小事業者のIT導入状況」のグラフです。「ホームページ開設状況」という項目を見ると、小規模事業者で5割弱、中規模企業では約8割が自社サイトを開設していることがわかります。
「小規模企業者」のWEBサイト開設は46.3%と半分弱になっていますが、調査が実施されたのが2012年11月時点ですので、現状ではもう少し増えていると思われます。ちなみに、ここで区分されている小規模企業者とは、5人以下(製造業や建設業、運輸業などは20人以下)の事業者のことです。
WEB制作のサポートをしている現場感覚からすると、いまやほとんどの中小事業者がWEBサイトを持っているという感じがします。実店舗をメインにした一部の業態など、WEBとの親和性が極めて薄いところや必要性がないところ以外は、すでに何らかのサイトを持っていると見ていいと思います。
意外と成果も出ている?
次のグラフは、「小規模事業者の自社ホームページの開設の有無と販売先数の変化」という調査項目。WEBサイトを開設したというだけでなく、それが販売先の増加につながったかどうかを尋ねた結果の集計です。
WEBサイトを開設した事業者では、販売先数が「大幅に増加した」「やや増加した」の合計が37.8%になっており、開設していない事業者との明確な差が見られます。この数値はちょっと意外で、「思ったよりずっと高い」というのが正直な感想でした。
WEBサイトを持つということは、その分だけマーケティング活動を増やしているということですから、継続すれば多少なりともプラス効果は出てくるということで、アンケートを取ればこのような数字になるのかもしれません。しかし、WEB制作やマーケティングコンサルティングなどで、中小事業者の支援を行っている人たちと話をしても、成果への実際の評価はもう少し厳しく捉えられている気がします。肌感覚としては、売上や集客への貢献は決して十分でないという事業者の方が多いのではないでしょうか。
持つことから、成果を出す事にシフト
データからWEBサイトの開設はほぼ行き渡っていることがわかりましたが、その実態はどうなのでしょうか?最近、中小事業者のWEB活用に関わっている多くの関係者が口を揃えて指摘することのひとつが、中小事業者の間で「WEBからの成果を挙げたい」、あるいは「WEBを活用することで問題解決をしたい」という意識が高まって来ているということです。
今なぜ、中小事業者にこのような意識が高まっているのか…。その背景として、次のような要因が考えられます。
- インターネット通販の広がり
- 企業競争の激化やグローバル化
- 代替わりによる事業戦略の見直し
インターネット通販の広がり
インターネット通販の普及によって、地域内には競合がいなくても売上はネットの世界から浸食されるようになりました。この影響を受けた中小事業者が、直接的に売り上げにつながるWEB活用として、自らもネット通販に乗り出すケースが増えています。
ネット通販はずいぶん日常化した印象がありますが、実は日本は中国やアメリカに比べてインターネット通販が世帯の全支出に占める割合が格段に低く、まだ10%未満しかないのが現状です。しかしその伸びには著しいものがあり、この割合が今後増えていくことは間違いないでしょう。事業者にとって、いっそう無視できない存在になっていくはずです。
また、東南アジアなどを中心とする海外に、ネット通販を通じて市場を広げる中小事業者も急増しています。
企業競争の激化やグローバル化への対応
ネット上だけではなく従来の商圏内やリアルな企業活動でも競争は激化しています。商圏への大型店の進出などによるシャッター通り商店街は、今や多くの地域で見慣れた光景になっています。
M&Aや大企業同士の提携や合併により、栄えるところはますます栄えるという構図が進み、取引先である中小企業に出される要求もシビアなものになっています。これにグローバル化も加わりますから、競争相手はもはや国内だけに留まりません。
このような状況下で、中小事業者も今まで届かなかった商圏にまで自ら商品やサービスを提供したり、下請けから脱皮して新たな顧客を得たり、海外に製品を売り込んだり、といった必要が出てきています。その解決策として今、WEBに白羽の矢を立てる事業者が増えているのです。
代替わりによる事業戦略の見直し
もう一つ、よく聞かれることに、多くの企業がちょうど代替わりの時期に来ているということがあります。地元に帰って来て、あるいは他社で経験を積んで来て、いざ親から事業を引き継ごうとしたら経営が行き詰まっていたなどという状況に直面。あるいは、従来の経営のやり方を時代に合ったものに変えていく必要があると判断するなどで、WEBを組み込んだ経営戦略で活路を開こうとする若い経営者が増えているようです。
以上、大きく3つの要因を挙げましたが、「WEBに解決を求める」という大きな流れがあり、その重要性はさらに高まっていくと思われます。
成功へのポイント。教科書的にならず、継続すること
中小事業者が様々な経営課題の解決策としてWEB活用を選ぶのは、コスト面などから考えても正しい選択だと思います。しかし残念ながら、成果が出せていないケースも決して少なくありません。最後に、成果を出すためのポイントを簡単にまとめておきたいと思います。
教科書的な発想に陥らない
予算はかけているのに、成果が出ない。そんな時にありがちな原因の一つが、教科書的な方法を取ってしまっていること。例えば、大企業と同じようなSEO対策を行うなどです。中小企業のWEBサイトは、大企業のサイトに比べれば数百、数千分の一程度の規模感しかありません。教科書的には正しく、大規模サイトであれば有効なことでも、中小事業者ではそこに時間や手間を割くよりも、別のことに取り組んだ方がよほど有益なこともよくあります。
例えば、効果が出やすい例として、WEBサイトそのもののリメイクが挙げられます。「SEOだけでは成果があまり出ないので、広告の利用も考えたい」というような相談ケースでも、アクセス解析をしてみると直帰率が異常に高い…などということがよくあります。このような場合、SEOや広告に予算をかけるよりも、まずはページを改修した方が成果に結びつく可能性が高くなります。
瞬間風速に踊らされず、継続することが大切
予算を投入すれば、売り上げや集客面ですぐに結果が出るだろう。WEBにそんな期待を持つ事業者の方も時にみかけますが、もちろんそんなに簡単なことではありません。メディアなどで紹介されるサクセスストーリーも、実際にはそれまでの地道な努力から生まれたものがほとんど。地に足を着けた目標設定と継続的な取り組みを行っていくこと何よりが大切です。
全体のスケールがそれほど大きくない中小事業者では、WEBを強化することで瞬間風速的に売上や集客が目立って伸びるケースは良く見られますが、それが持続することはそれほど多くありません。
しかし、そこでがっかりしたり、継続することをやめてしまったりしたのでは元も子もなくなってしまいます。瞬間的な結果だけに一喜一憂するのではなく、「継続」という視点を持った活用を行っていきましょう。
今回のまとめ
- データ的に見れば中小事業者のWEB活用は進んでおり、満足度も意外と高い。
- 最近では、ビジネスの打開策としてWEBに活路を求める中小事業者が増えている。
- 中小事業者のWEB活用では、短期的な結果に一喜一憂せず継続していくことが大切。
以上、今回は中小事業者のWEB活用実態についてまとめてみました。とりあえずホームページを持つという段階から、いかにして成果を出すかという段階へ。さらには経営戦略の柱としてもWEBの重要性は高まっています。多くのサクセスストーリーが生まれるよう、当社もお手伝いしていきたいと思います。
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