最近、企業サイトの開設やリニューアルでも、UX(ユーザーエクスペリエンス)の視点が重視されるようになっています。それを可視化する、“カスタマージャーニーマップ”の作成も一般化してきました。その背景には、マーケティングオートメーションへの注目などとも相まって、ユーザー中心の戦略立案が重要だという認識が、以前にもまして高まっていることがあります。
とは言え、「わかっているけど、そこに多くのリソースはかけられない…」そんな事業者の方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、3ステップで完成する、中小事業者でも取り組みやすい戦略フレームワークの提案をしてみたいと思います。テンプレートも用意してみましたので、ぜひ活用してみてください。
ベースにしたのは、コンセプトダイアグラムの手法
今回めざしたのは、“早く”“シンプルに”“ユーザー中心の”戦略シナリオづくりができる、誰でも取り組みやすいフレームワークです。詳細なペルソナづくりやカスタマージャーニーマップの作成、KPI設計などに「時間」や「お金」をかけられない…、そんな場合でも最低限の戦略や成果指標を可視化しておけるようなものをめざしました。ヒントを得たのは「コンセプトダイアグラム」の手法です。
コンセプトダイアグラムは、UX分野の第一人者である清水誠さんが提唱する手法。清水さんがアクセス解析で名が知られていることもあって、解析手法としてとりあげられることが多いのですが、数字分析よりもユーザーの行動に重きをおいており、次のような特徴を持っています。
- ユーザー中心の視点。
- ゴールを明示している。
- 流れや各ステップがマッピングされている。
- 効果測定の設計ができる。
このような点に着目し、コンセプトダイアグラムの手法を参考にしながらまとめたのが、以下にご提案するフレームワークです。
3ステップで戦略シナリオが完成!
実際にこのフレームワークの使い方について解説していきましょう。地域密着型不動産仲介店のWEBサイトのリニューアルを例にして話を進めていきます。
ステップ1・ゴールを設定
まずは、ユーザーの立場から、ニーズとゴールを設定します。ユーザーが「何を考え(ニーズ)」、「どうなりたいか(ゴール)」をシンプルに一本の線で結びます。この時、ざっくりとしたユーザーの特徴も付けておきます。
<記入事例の解説>
この事例で、ゴールを「引っ越し」ではなく「より良い暮らし」と記載していることに注意してください。ユーザーは住み替えをすることでより良い暮らしを望んでいるのであって、引っ越しをすること自体が目的ではありません。引っ越しというゴール設定にしてしまうと、ユーザーの満足度が置き去りにされてしまうのです。このように結果ではなくユーザーの心理をよく考え、その真のニーズを満たすゴール設定を行ってください。
ステップ2・シナリオとコンテンツをマッピング
次に、設定したゴールにユーザーを導いていくためのシナリオとコンテンツを、マッピングしていきます。ここでは、興味から行動に至るまでのユーザーの変化を、自社のビジネス(サービス)に合わせた行動フローとして考えていきます。
そして、そのシナリオにそってコンテンツを考えていきます。ここでは、「他がやっているから」「SEO対策」などではなく、シナリオに合わせて何が必要かを考えます。
<記入事例の解説>
ここは重要なプロセスです。主観に陥らないように、ユーザー視点で考えましょう、この記入例では、情報源として「なぜなぜ教えて?引越しをした理由」を利用。引っ越しの理由として、「狭い」と「騒音」に不満を持つ人たちが多いことに着目し、これを課題として記載しました。そこから、心理や行動をマッピングしていくことで、シナリオを完成させました。
シナリオができたら、各コンテンツを考えていきます。例えば、興味段階では「アンケート+コラム」のコンテンツを企画。これは、実際の来店者アンケートのデータをもとにしたコラムを掲載することで、悩みを共有し興味をもってもらいやすくするためです。関心段階のコンテンツでは、悩み解消のためのアドバイザーが登場するコラムを想定しました。「狭さを解消できる間取りとは?」「騒音に強い建物とは?」といった専門情報や、地域を限定しての住み替えニーズのため、「静かなおすすめエリア」など地域の不動産店ならではの視点も盛り込んでいこう…などの企画が生まれてきます。
これは、あくまでも説明のための記入例ですが、このようにシナリオに沿って、つまりユーザーの心理に沿ってコンテンツを考えていきます。
ステップ3:KPIを設定
最後に、コンテンツごとのKPIを設定します。ここで個別に指標を決めることによって、設定したシナリオが有効かどうか、各コンテンツが機能しているかどうかを検証するための指標が明確になり、改善ポイントが見えやすく、PDCAを回しやすくなります。
<記入事例の解説>
コンテンツごとの成果指標を明確にしていきます。こうしておけば、物件検索結果のブックマーク数をカウントできる機能が必要なことなど、解析の設定のために何が必要かもあらかじめ見えてきます。また、訪問率を把握するためには店舗との連携も必要なことがわかります。このようにして、オンライン上でのアクセス解析だけでなくビジネス全体を通した効果測定の準備をすることができます。
さっそく、やってみましょう!
いかがでしょうか?これならできそう…という気がしてきたら、あなたもさっそく、試してみてください。きれいなドキュメントを作ることが目的ではないので、自分がやりやすい形にアレンジして作成すればOK。参考として、テンプレートと今回取り上げた事例の記入例を、PDFとパワーポイント形式でダウンロードしていただけるようにしています。よろしければご利用ください。
テンプレート(パワーポイント形式・zip)
テンプレート(PDF形式)
今回のまとめ
今回は、コンセプトダイアグラムの手法を参考に、簡単にできる戦略づくりフレームワークを考えてみました。ゴールの設定→シナリオとコンテンツのマッピング→効果測定指標の設定。3ステップで手早くシンプルにできる、ユーザー中心の戦略シナリオづくりのツールとして、よろしければ活用してみてください。
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