大企業も中小企業も、そして個人までもが次々と立ち上げ始めているオウンドメディア。「うちもやってみるべきかなあ…」と、気になっている方もいらっしゃるかと思います。今回は、オウンドメディアを作るときに、どのようなコンテンツを作り、どう運営していけばいいのか、中小企業に役立つ参考事例をとりあげながら考えてみたいと思います。
オウンドメディアについて、まだあまりよく知らないという方は、
「今すぐ始めるべき?オウンドメディアがこれほどまでに注目されるようになった理由」
もどうぞ。
■中小企業にとってのオウンドメディアのあり方は?
中小企業がオウンドメディアを作るとしたら、どんなやり方があるのでしょうか?大手企業であれば、資金を投下してプロジェクトを立ち上げ、ゼロから新しいテーマのメディアサイトを作っていくこともできるかもしれません。それを起点に新規ビジネスを展開していくことも可能でしょう。しかし、中小企業の場合はそういうわけにはいきません。
そこでおすすめしたいのが、インバウンド発想でのメディアサイト。自社が展開する事業の対象顧客をターゲットとして、その人たちにとって有益な情報を提供し、自社の集客やブランディングに役立てて行くというやり方です。これなら、事業活動で蓄積してきたノウハウや体験をコンテンツに活かすことができ、人的ネットワークなどのリソース面でも強みを発揮することができるはずです。
こう言うと、「それならこれまでもブログでやってきたことと同じでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ある意味では、メディアサイトは、それを一歩進めた進化形とも言えます。違いは、テーマのさらなる明確化と更新頻度、そして成果指標です。
メディアサイトでは、ひとつのテーマを掲げ専門性を明確にします。そして、理想的には毎日、少なくとも週に2~3回ペースで、クオリティの高い記事を更新します。また、PV(ページビュー)などのアクセス指標とともに、顧客との関係強化の視点が重要になります。それはちょうど、特定分野の専門誌が毎月定期的に発行され、固定的な読者(ファン)を持つことで発行部数を保っているのに似ています。
■参考にしてみたいメディアサイト
始めるとしたら、どのようなサイトがいいだろう…。そんな時には、検索してみれば、本当にたくさんのメディアサイトが見つかります。それらを見ながら、自社の可能性について考えてみましょう。以下に、中小企業が立ち上げを考える時に参考になりそうなメディアサイトをご紹介していきます。
iKnow! BLOG
「iKnow! BLOG」は、英語学習サービス「iKnow!」が運営する英語学習ブログです。例えば、「もう会話ネタに困らない!初めて会った外国人とすぐに打ち解ける英語フレーズ」などといった身近な英語の表現集が充実。楽しく読みながら英語のボキャブラリーを増やすことができるようにつくられています。英語学習サービスの会社なら、ボキャブラリー・ネタは苦労しなくても作って行けるはずなので、コンテンツ更新も行いやすそうです。
「超簡単!英語初心者に伝えたい「iKnow!」の始め方」など、自社サービスの紹介記事もさりげなく提供されていますが、宣伝色が出ないようにまとめられているうえ、英語を話してみたいと思わせるコンテンツの中にあると、不思議と違和感がなく自然に受け止めることができます。
<いいところ>
- 身近な英語を楽しく学びたい人、という対象像が明確
- 更新軸が明確(ボキャブラリーを増やす)
- サービスの良さを自然に伝えられる
ニキペディア
「ニキペディア」は、ガシー・レンカー・ジャパンが提供するニキビケア情報サイト。「ニキビのことならニキペディア」のキャッチフレーズで、ニキビに悩む人に役立つ情報を豊富に提供しています。最終的な着地点は、プロアクティブという自社のニキビケア製品の宣伝だと思いますが、ニベア、オロナイン軟膏など他社製品の使用レポートも掲載して、その良さはきちんと評価するなど、客観的な立場でコンテンツを編集しているところには信頼が持てます。商品の周辺情報を提供するメディアサイトの好例だと思います。
<いいところ>
- ニキビに悩む人のための情報に特化している
- スキンケアアドバイザーが監修
- 中立的立場の記事が信頼性を感じさせる
法律相談広場
身近に起こりがちな法律問題に弁護士、司法書士が回答するQ&Aサイト。その数の多さには圧倒されます。Q&Aの回答を見るためにはログインしなければならないしくみになっており、顧客獲得につなげていくためには、こういうやり方もあるという一つの参考になると思います。
また、 法律コラムとして、法律の周辺の様々な話題を取り上げたコラムも掲載。例えば「【恋愛の自由 VS 社内恋愛禁止】社内恋愛禁止を破ったらクビって有効なの?」など、興味をひきやすい身近な話題が取り上げられ、毎日のように更新されています。Q&Aという蓄積型のコンテンツとコラムという更新性の高いコンテンツの両方で構成している事例として参考になります。
<いいところ>
- 法律に関する疑問が網羅された膨大なQ&A
- データべ―ス型と更新型のコンテンツを組み合わせている
- 難しくなりがちな法律を身近な切り口から説明している
歯医者が教える歯のブログ
歯や歯科治療に関係する専門情報を、わかりやすく掲載したメディアです。歯医者さんなら当たり前に持っている情報も、こんなふうにまとめて発信していくと立派なメディアになります!というお手本のようなブログサイト。歯の予防や治療法など、普段はなかなか知ることができない質のいい情報がたくさん掲載されています。歯科医院と言う特性を考えて、地域に根差した情報を掲載しているところにも、工夫が見られます。「こんな情報を提供している歯医者さんなら安心だし、腕もよさそう」…という印象が、来院につながりそうです。
<いいところ>
- 普通は聞けないような治療の専門情報を公開している
- 市販の商品や薬なども専門家としての目で取り上げている
- 地域性を考慮している
経営ハッカー
「経営ハッカー」は、クラウド会計システムを提供するベンチャー企業freeeが運営しているメディアサイトです。スタートアップ、フリーランス、経営者、個人事業主などターゲットがはっきりとわかり、会計・経理処理、節税、確定申告などをテーマに、具体的に役立つノウハウやまとめ系コンテンツが豊富に揃っています。起業や独立をした人の多くが突き当たる会計や経理の悩みを解消してくれる良記事が、たくさん提供されています。自社サービスについては記事の最後に少し触れる程度にして、情報提供に徹している点でもオウンドメディアの基本が押さえられています。
<いいところ>
- 具体的な対象者が言葉で明確になっている
- 実際に役立つ実用的な情報が豊富に提供されている
- 更新頻度が高い(一日に2~3記事)
以上、5つのメディアサイトの事例をご紹介しました。どれもPR色がなく、自社のメインとなる事業領域の周辺で、ターゲット層に役立つ情報を提供しています。あなたの会社の商品やサービスにふさわしいメディアサイトを考える時の参考にしてみてください。
今回のまとめ
1)中小企業のメディアサイトでは、自社事業に関連する専門性の高いテーマを設定すると運営しやすい。
2)ポイントは、扱うテーマの明確化と更新頻度、そして顧客との関係強化の視点。
3)構想を練るために、事例研究をしてみよう。
雑誌を発行することはできなくても、WEBメディアなら企業規模の大小に関係なく運営していくことができます。これまでにも、様々なかたちで価値あるコンテンツの提供を行ってきた…という方も多いと思いますが、自社の「メディアをつくる!」と位置づけなおして考えることで、取り組む意気込みもぐっと高まって来るのではないでしょうか?