前回の【概要編】に続いて、今回はマーケティングオートメーションを実現するためのツールの動向についてまとめてみたいと思います。
マーケティングオートメーションの本質はOnetoOneマーケティングだ、ということを入門編では書きましたが、それを実現させるマーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)は、今まさに百花繚乱という感じです。以下に、主要ツールの紹介をしていきます。最近では、中小事業者が導入しやすい国産ツールもいろいろ出て来ていますので、そちらもチェックしてみましょう。
MAツールの機能とは?
MAツールに共通する基本機能
マーケティングオートメーションツール(以下MAツール)には、様々な特徴をもった製品があります。そのため、すべてが同じだというわけではありませんが、共通する基本機能としては、次のようなものが備わっていると考えて良いでしょう。
MAツールの基本機能
- コンテンツ管理、ページ制作機能(CMS)
- コンテンツの出し分け機能
- メール配信機能
- 顧客情報管理機能(CRM)
- ログ解析機能
- スコアリング機能
- シナリオに基づくマーケティング実行機能
特徴は、スコアリング機能とマーケティング実行機能
このようにMAツールでは、CMS、CRM、メール配信、アクセス解析など従来バラバラであったツール群がひとまとまりになっており、それらを一元的に使える統合型のソリューションだと言えます。
また、MAツールの中でも重要な要素になるマーケティングの自動化機能ですが、これはスコアリング機能とマーケティング実行機能の組み合わせによって実現されます。その部分が、MAツールならではの特徴になります。
SFAとの役割の違いは?
BtoB分野では、「SFAとどう違うのか?」という疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。SFA(Sales Force Automation)では、営業支援システムとして営業状況の可視化やデータの共有、進捗管理などを行いますが、見込客獲得やリードナーチャリングという営業の前段階は含まれていません。MAツールとの大きな違いはここです。
役割としては、MAツールで集客とナーチャリングまでを行い、実際の営業対象になってからSFAで管理をしていくという流れになります。
このため、多くのMAツールはSFAとの連携が行えるようになっています。MAツールは見込み度の高い顧客をSFAに引き渡す前段階のツール、そう理解しておくと良いでしょう。
MAツールにはいくつかのタイプがある
MAツールにはMarketo、Hubspotなど、最初からMAツールとして開発されたものもありますが、そうではないものも多くあります。例えば、メール配信システムをベースにしたものはその代表と言えるでしょう。もちろん出自がメール配信システムだけに、その部分では特に高い評価がなされます。
CMSベースでマーケティング機能が充実したものもあります。商用CMSのSitecoreもその一つ。CMSですからコンテンツの出し分けはお手のもの。例えば以前、商品Aに関する資料請求をしたユーザーが再度トップページにアクセスしてきた時は、その廉価版の商品A-2のバナーを表示させるなどといったことが手軽に行える他、別のツールを使うことなくA/Bテストも行えます。通常はCMSとして分類されていますが、機能的にはこれもある種のMAツールだと言えます。
海外発MAツールの御三家
ここからは、主要なMAツールについて簡単に紹介していきます。現状では、やはり海外のものが強く、以下の3つがその代表格です。
Marketo(マルケト)
日本語にも対応。日本法人ができたこともあって人気が高いのがMarketo(マルケト)です。
最初からMAツールとして開発されていることもあり、機能も操作性も良いと評価されています。
冒頭に挙げたMAツールの機能要件をすべて満たし、SNSや他のツールとの連携でもトップクラスの位置づけです。MAツールは基本的には自社が展開するメディア上で効果を発揮しますが、MarketoはGoogle AdWordsとも連携。Googleのネットワーク上でも、自らが持つデータを基にしたパーソナライズ広告を提供することを発表しています。
Oracle Cross-Channel Marketing(旧Eloqua)
今でも以前の名前、Eloqua(エロクア)が使われることが多いMAツールの元祖と言うべきツールです。
もともと、キャンペーンの自動化で優れたパフォーマンスを発揮していましたが、データベースの超大手、Oracleの傘下となったことでよりパワーアップしています。オンラインのデータだけでなく、オフラインのデータを活用した施策などは、その強みを生かした特徴だと言えるでしょう。セキュリティの堅牢さにも定評があり、ハイエンドのMAツールとしての評価を確立しています。
https://www.oracle.com/jp/marketingcloud/index.html
Hubspot
前の二つまでは「やはりMAツールは大手のもの」と言われる存在でしたが、このHubspot(ハブスポット)は中小事業者に適したツールだと言えます。
もともとのターゲットを中小事業者としていることもありますが、見込客に「見つけてもらい、獲得していく」という部分に力点が置かれているからです。つまり、コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティング向けのツールなのです。実際にアメリカでコンテンツマーケティングに成功した有名な中小事業者は、ブログで見込み客を集めて行こうと考えた時にこのHubspotを導入しています。
海外製ツールは、群雄割拠の様相
海外では、以上の御三家に続けとばかりに、追い上げを見せるMAツールがいくつも登場。米国ではすでに200以上のツールベンダーが存在するとも言われています。例えば、Adobe Campaignが挙げられます。Photoshopなどのグラフィックツールで有名なアドビですが、大手企業を中心に高機能なマーケティングソリューションを提供しています。日本でもつい先日より、本格的なMAツールとしてこのAdobe Campaignの提供が始まっています。
SFAで有名なセールスフォース・ドットコムもSalesforce PardotというMAツールを提供。同社の提供するSFA、Sales Cloudと連携しての営業ツールを構築できます。また日本国内でも以前からメール配信システムで有名なエクスペリアンも、Experian Cross-Channel Marketing PlatformというMAツールを提供しています。
登場し始めた国産ツールにも注目!
最近は日本製のMAツールも、いろいろ出てきています。CRMツールで有名なシナジーマーケティングはクラウドサービスのSynergy!360にマーケティングオートメーション機能を搭載。国内のマーケティングオートメーション専業会社シャノンが提供するシャノンマーケティングプラットフォームも代表的なツールです。さらに、MA専門ツール提供会社として起業し、本格的なサービス提供を開始したSATORIも、新興のものだけあり機能拡張が盛んに行われています。
コンテンツマーケティングで有名な株式会社イノーバは、クラウドCMOというツールを提供。イメージ的にはHubspotを日本向けに、より使いやすくしたものです。また、株式会社ベーシックもHomeup!というマーケティングオートメーション機能の付いたオウンドメディア用CMSを提供しています。このあたりは、ツールのわかりやすさなどで、中小事業者でも導入しやすいものになっています。
さらに、最近リリースされたばかりで注目されているのが、オプトグループのデジミホのR∞(アールエイト) base moduleというソリューション。PV従量課金制で月額2万9800円からという、まさに価格破壊ともいえそうなインパクトのある設定になっています。
海外製のツールは日本語化してあっても無理やり対応させた感じのものも多く、さらにサポートも受けづらいという声を聞きます。国内製の優秀で手頃なツールの増加により、MAツールの導入はより幅広く進んでいくかもしれません。今後のツールの動向にも注目したいと思います。
今回のまとめ
- MAツールはCRMやメール配信、CMSなどの機能を一括で持つ。それにスコアリングやシナリオに基づくマーケティング実行機能があるのが特徴。
- SFAが実際の営業段階の管理、支援ツールなのに対してMAツールはその前段階の集客とナーチャリングを担う。
- MAツールは海外のものから始まったが、現在では国産ツールも増加。手頃な価格帯のものも登場している。
ざっと紹介しただけでも、このようにかなりの数があるMAツール。実際のマーケティングや営業プロセスに合わない導入をしてしまったり、機能が高度すぎて使いこなせなかったりなど、失敗ケースも発生しているようです。ツールから入るのではなく、戦略と運用計画を立てて、目的や体制にあった選定をすることがポイントになりそうです。
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