2015年12月1日~2日の2日間、世界最大級のデジタルマーケティングカンファレンスの日本版、「アドテック東京2015(ad:tech tokyo 2015)」が東京国際フォーラムで行われました。デジタルマーケティングに関わる国内外の企業が、一堂に会するビッグイベント。今回はそのレポートをお届けします。
デジタルマーケティングの現在地を実感したイベント
デジタルマーケティングイベントということで、それに関わる多くの企業が出展。GoogleやFacebookといったブースもあって、グローバル色も満載でしたが、他のマーケティングイベントなどでもお馴染みの国内企業も多数出展していました。
展示だけでなく、セミナープログラムも多数用意されていました。また、展示会場内でも無料セミナーやブースごとのイベントが多数行われていました。
全体の印象としては、飛びぬけて目新しいものはなかったものの、テクノロジーの進化はより確実に、そして着実に進んでいるということを体感。高度化しつつあるマーケティングの現在を実感できるイベントでした。そんな中から、いくつかの気になった展示を紹介していきます。
分析や効果測定を、活用へとつなげるツール
テキストマイニングツール「見える化エンジン」で知られ、ブログやテレビの話題を解析するツールなども提供しているプラスアルファ・コンサルティングは、今回の展示ではマーケティングオートメーションツールとして「カスタマーリングス」を中心に紹介していました。分析結果データを活かして、そのまま顧客のセグメントと戦略シナリオに沿ったメール配信を行えるという、なかなか優れたツールだと感じました。
分析ツール単体では、結果につながるツールとは見られにくく、予算が限られた企業ではなかなか利用されにくいのが現状だと思います。しかし、分析と活用が一体化したマーケティングオートメーションツールとなれば、可能性が出てくるように感じました。
会場で行われていたある大手企業のWEB担当者によるトークセッションでも、「分析はしています。でも、実情として活用はまだまだ手つかずで…」というコメントがありました。これは、他のマーケティングイベントやセミナーなどでもよく耳にする悩み。データ分析をきちんと行って、それを活かしてマーケティングを実行していくという企業は、日本ではまだまだ少ないようです。「カスタマーリングス」のような、ワンストップで分析から施策実行までができる一体型ツールの普及は、今後へのひとつの鍵となるかもしれない気がしました。
【参考】カスタマーリンクス http://www.pa-consul.co.jp/service/rings_web/
中小事業者が使えそうなソリューション&サービス
ここからは、当日覗いたブースの中で、中小事業者にも使いやすそうなソリューションをいくつか紹介していきましょう。
動画もA/Bテスト Crevo(クレボ)はアニメーション動画の制作会社。今回は動画広告のA/Bテストを中心にした展示が行われていました。動画すべてを作り直すのではなく、一部分を差し替えるといったかたちのため安価に実施できるとのこと。動画もすっかり定着し、クリエイティブの効果を考える時代に入って来ているようです。
YouTuber活用のトータルサービス 動画と言えば、YouTuberの話題は以前ほど耳にしなくなりましたが、決して陰りがあるわけではなく、むしろ「すっかり定着したので特別話題にならなくなった」と、とらえたほうが良さそうです。そんな中でGMO TECHはBizcastという会社と組み「C-clip」というサービスをリリース。サービス内容は、YouTuberを活用した動画の制作、PR、広告掲載のトータルプロモーションを提供するというものでした。
YouTuberという存在を世に生み出したのはYouTubeですが、動画広告メディアとしてはすでにYouTubeよりもfacebookの方が効果が高くなっていると言われる現状があります。そうしたトレンドも踏まえ、広告主とYouTuberがWin-Winの関係になるようサポートしていくのがこのサービスの魅力のようです。
マンガマーケティング マンガマーケティングの有名どころシンフィールドも、この展示会に出展していました。LP(ランディングページ)用のマンガ提供がメインですが、最近はコンテンツマーケティングの素材としての問い合わせが増えて来ているそうです。KPIはPVに設定されることが多いということでしたが、コンテンツ戦略をきちんと組み立てれば、申込みなど直接のコンバージョンを得るために活用していくことも可能だと感じました。
新たなアドテク、PMP
アドテク(広告配信に関するテクノロジー)全体の印象で言うと、広告媒体側のソリューションが、他の展示会に比べて多く紹介されているのが特徴的だと感じられました。
出展社のひとつジーニーは、SSPにDSPやDMP(いずれも広告配信を最適化する技術の名称)を組み合わせてトータルにアドテクを支援しているということですが、今回の展示では「PMP」について大きめに紹介していました。
PMP:プライベートマーケットプレイスとは? PMPは、プライベートマーケットプレイスの略。2014年末頃から日本でも言われ始めた新しいアドテクです。ごく簡単に言うと、広告主を限定して決められた媒体の広告枠を販売するという純広告にかなり近いもの。媒体枠が決まっていることで、品質のあまり良くない広告枠に広告が掲載される事態を防ぐことができます。それがなぜアドテクの範疇に入るのかと言うと、出稿時にSSPやDSPといった配信技術を利用するため。純広告とは違い、出稿管理やデータ連携なども行うことができるのです。
PMPは、日本では電通が推進するもので、実際の利用企業もTVCMを出稿しているようなブランド広告主に限られるようですが、アドテクの新しい動きに関するひとつの知識として、覚えておくと良いのではないでしょう。
SEOやコンテンツマーケティングまわりは、やや静か!?
こうした展示会の定番テーマと言えばSEO、また今年の盛り上がりという意味で言えばコンテンツマーケティングなのですが、これらのブースへの入りはやや少なく静かな印象を受けました。SEOへの需要は依然として大きく、熱の高まりからすればコンテンツマーケティングももっと盛況でも良いはずですが、その割には熱気に欠けるように感じました。
ただしこれは、興味が薄いからではなく具体的なソリューションが少ないからかもしれません。SEOやコンテンツ関係では、コンサルティング要素や各企業に合わせてオーダーメイドで企画していく部分が大きいため、具体的な展示が行いにくく、内容的に来場者の関心を惹きづらいような印象を持ちました。こうしたイベントに出展するのは止め、個別セミナーを頻繁に開催する方針に切り替えた会社もあるようですし、サービスやソリューションが紹介される展示会とは、あまり相性がよくないということかもしれません。
目立ったのは、facebookが自ブース内でInstagramを大々的にプッシュしていたこと。ソーシャルメディアを中心にした代理店やコンサル会社もInstagramを強く打ち出しているのが目立ち、この先も注目を集めそうな熱気を感じました。このあたりは、コンテンツマーケティングにも影響していきそうな気がしました。
今回のまとめ
以上、かなりダイジェストしたかたちになりましたが世界最大級のデジタルマーケティングカンファレンスの日本版、「アドテック東京2015(ad:tech tokyo 2015)」についてご紹介しました。高度化しつつあるマーケティングの現在。その全てをお伝えすることはできませんが、雰囲気を少しでも感じていただければ幸いです。なお、このイベントは来年も開催されるようです。日程はまだ未定のようですが、関心のある方は、随時以下の公式サイトをチェックしてみてはいかがでしょうか?
<参考サイト> アドテック東京オフィシャルサイト http://adtech-tokyo.com/ja/
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