経産省の発表によると、2014年の※EC市場規模[BtoC部門]は約12.7兆円(前年比14.6%増)でした。また某リサーチ会社によると、今後10年内にEC市場規模は2倍以上拡大することが予測されており、EC市場の続伸はまだまだ続きそうです。(※インターネット通販など電子上で行われる商取引のこと)
【参照】:平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(経済産業省)
ところでECと言えば「BtoC」もしくは「BtoB」、あるいは最近だとシェアリングエコノミーの台頭で「CtoC」取引が頭に浮かびますが、「買取市場」を含む「CtoB」の領域もEC市場の一角を担う商取引として、今後その存在感を増すことになるかもしれません。
「買取市場」にイノベーションを巻き起こす【ヒカカク!】の可能性
一般消費者がモノを「買う」ことに関する情報は「価格.com」、「amazon」、「楽天」などの各プラットフォームによって一通りの整備がなされています。しかし一方で、一般消費者が「モノを売る」ことに関する情報はいまだにほぼ整備されていない状況があるのではないでしょうか?
この「売り手(一般消費者)/買い手(企業)」間の情報格差は、例えば中古商品を買取ショップにもっていくと「言い値で買い叩かれる」という市場の不均衡状態を生み出します。
もし「売り手/買い手」双方のもっている情報が均衡している場合、「売り手」である一般消費者は一番いいオファーを出してくれる「買い手」を選択することができるはずですが、実際に買取ショップを何店も回ってベストなプライスを求めるには、あまりにも時間・労力がかかりすぎるのが現状です。
こうした「買取市場」の非効率性の解消に斬りこんだのが、買取情報プラットフォームサービス【ヒカカク!】です。
【ヒカカク!】は株式会社ジラフによって運営されるサービスですが、そのスタートは2014年の10月。まだローンチから1年余しか経過していませんが、※シード期に早くもベンチャーキャピタル2社からの資金調達を獲得、2015年にも追加資金調達を得て、急速成長中のスタートアップ・サービスです。
(※初期/創業段階にあるベンチャー企業のこと。Seed=種)
また【ヒカカク!】の買取業者と一般消費者をマッチングさせるプラットフォーム型ビジネスモデルは「キャンパスベンチャーグランプリ2014東京大会」で日刊工業新聞社賞も受賞しています。
今回は、その株式会社ジラフCEOである麻生輝明氏に【ヒカカク!】に関するお話をお聞きできました。
【ヒカカク!】が実現する「買取市場」の効率化
――まず「買取市場」にある「売り手(一般消費者)―買い手(企業)」間の情報の不均衡性を【ヒカカク!】が適正化/効率化することで、実現できるものとはなんでしょうか?
結論から言えば、取引回数の増大により「買取市場」それ自体が拡大することになると考えます。「買い叩かれてしまうから売らない」や「売るのが面倒」といった売却を控えるような行動原理を買取相場情報やユーザーのレビューをもとに、「良い買取業者」とのマッチングへと繋げ、買取申込のリピートへと繋げていきます。
――これまでそうした情報の不均衡性を、ある意味利用する形で利益を上げてきた既存業界(古本屋、質屋など)が【ヒカカク】を利用するメリットとはどのような点にあるとお考えでしょうか?
既存業界は敵だというわけではなく、決められた立地で買取サービスを提供してくれるわけなので、それを「最適」と考える売り手とマッチングする可能性があります。
また、店構えが入りにくいお店に足を運ぶきっかけを【ヒカカク!】が与えることも可能ですから、店舗側も集客チャネルとして【ヒカカク!】を利用できるメリットがあります。
――情報プラットフォームである【ヒカカク!】のビジネスモデル上、ユーザー/参加企業を「どれだけ網羅できるか?」がサービス成長を加速させる上で大きなファクターとなると思いますが、ユーザー/参加企業の獲得方法は?
どちらもSEOです。月間数億ページビューの「mery」を立ち上げたSEOディレクターの人間がエンジェルラウンドで投資しており、監修しています。
ユーザーも買取業者もウェブ上で買取相場を調べているので、インバウンドで業者と商談をする手段にもなります。あとは「リサイクル通信」など中古業界の媒体にも露出しています。
――【ヒカカク!】のオウンドメディア「ヒカカクゼミ」運用はこうした集客面を期待しての運営でしょうか?
オウンドメディアも集客チャネルの一つですが、片手間に回す感覚で運営しています。運用方針としてはユーザーにとって便益のあるまともなコンテンツを書くというのを意識していて、自分自身も目を通しています。現在で400記事ほどあります。
――シェアリングエコノミーの台頭で【メルカリ】などCtoC系の商取引サービスが話題になっていますが、市場でのポジショニングにおいて意識されることはありますか?
【ヒカカク!】は個人間取引ではないので「手間暇がかからない」、「正しく査定して貰える」というのは価値でしょう。※時間単価の高いユーザーにとってCtoC系のサービスはあまり便利とは考えられません。
また【ヒカカク!】は売る際のプラットフォームを目指そうと考えているので、既にフリマアプリなどの情報も連携を検討しています。
(※編集者註 ここでは時間コストに厳しく、買取に手間暇をかけたくないユーザー)
――現在【ヒカカク!】の取り扱い案件は「国内向けの電子機器」が中心ですが、サービス自体の拡張性として現在どこまで想定していますか?
世界展開も検討しています。新興国と取引することになるでしょう。特に日本の中古品は世界で人気があります。
(画像引用元:株式会社ジラフHPより)
――最後に、【ヒカカク!】および株式会社ジラフの今年1年を振り返ってどのような1年でしたでしょうか?また来年の展望などお聞かせください。
今年は綿密な準備をしてきた1年であり、サービスとしての基盤を固めることができました。バーティカルなメディアでありながらも、既にそれなりの数のユーザーがアクセスする媒体となっております。
またGREE、サイバーエージェント、グル―ポンジャパンなど大手のインターネット企業から精鋭が集まってきておりますが、来年度以降は更に優秀なメンバーを集め、事業をスケールさせて行きたいと思っています。
人物紹介
麻生輝明氏 (株式会社ジラフCEO)
一橋大学商学部に入学後、複数のベンチャー企業で事業企画、海外サービス調査などを担当。合同会社ヒカカクを設立後、ジラフ社へ組織変更。
最後に
麻生氏の言にあったように、「買取市場」の売り手/買い手双方の流動性が【ヒカカク!】によって高まれば、市場原理が働き市場全体の効率化と拡大が実現していくことになります。
その時一般消費者にとっては「モノを売る」行為がもっと身近な存在となり、ひいては使わないものを「捨てる」から「売る」の大転換が起こる可能性さえ感じさせられます。
――【ヒカカク!】が斬りこむ「買取市場」は数年後、現在とはまったく違うカタチになっているかもしれません。