ここ数年で急速に社会インフラ化したものと言えば「クラウド」。データ保有・共有から人材調達までその利用シーンは多岐に渡っています。各シンクタンクから発行される予測レポートを見ても、クラウド市場規模のさらなる拡大はコンセンサスとなっており、実際に2016年中にも1兆円規模を突破しそうな勢いです。
こうした数あるクラウドサービスの中でも注目を集めるサービスの一つが、企業の会計・財務など「バックオフィス業務」をクラウド化するサービスです。現にバックオフィス業務にクラウドを導入する企業も増加しており、総務省が発行する「通信利用動向調査」を見ても過去3年間堅調な伸びを示しています。
(▲総務省「通信利用動向調査(平成24~26年)」参照)
今回は、企業のあらゆるバックオフィス業務をクラウドソーシングできるWebサービス【Gozal】を運営するスタートアップ「株式会社BEC」の代表取締役高谷元悠(たかたに もとひろ)氏にお話をうかがいました。
【Gozal】は2013年の「アントレプレナーイノベーションキャンプ」にて優勝後、昨年2014年8月に正式スタートし、同年12月にはサイバーエージェント・ベンチャーズから資金調達(第三者割当増資)を獲得しています。
また税務・法務などに関する実用的な情報を発信する【Gozalメディア】では、多くの専門家(士業)とアライアンスを結び、起業家に向けたコンテンツ提供も積極的に行っています。
【Gozal】の事業展開について
――まずは【Gozal】のKGI・KPIを教えてください。
【Gozal】とは、「中小企業がバックオフィス業務で悩む時間をゼロにする」サービスであり、思想でもあります。すべての企業は事業を行う上で、バックオフィス業務に対処する機会が必ずあります。その時に【Gozal】をご利用になって、業務が安心かつ安全に完結できることが重要なバリューだと考えています。
KGIとKPIはプロダクトのフェーズによって変えることも必要だと思っていますが、現時点のKGIは「2016年末までにご登録頂いた中小企業ユーザーのアクティブ率を80%以上にすること」だと考えています。ここでの「アクティブユーザー」の定義は、「会社情報を【Gozal】に預けて頂き、自動化ツールをご利用頂いたユーザー」を指しています。
またKPIとしては、「法務自動化ツールの利用率」や「税務自動化ツールの利用率」など、ツールごとの利用率を設定しています。
https://gozal.cc/
――これらを実現するためにどのような取り組みを行われていますか?
【Gozal】のUI/UXを改善すること、ツールで提供できる価値領域の増加などを優先して行っています。
一方でカスタマーサポートの体制を強化し、ユーザーからの問い合わせや、機能要望などを拾い上げる仕組みも展開しています。できるだけユーザーからいただく声をベースに開発を進めていくことを心がけています。
――【Gozal】は2015年8月に正式リリースされて、まだ1年も経ない時点ですでに1,000社/200事務所を集められていますが、法人(顧客)/専門家(士業)に対してそれぞれどのようなプロモーションを行われているのでしょうか?
SEOによる自然流入で毎日数十社の登録を頂いているので、登録していただいたユーザーに即時にご連絡を送り、要望やツールとしての導入をご提案させていただいております。バックオフィスツールは中小企業にとってはとても重要なものなので、しっかりと重要性を説明させていただいて、信頼していただけるように心がけています。
またプロモーションを大きく行うことはせず、じっくり1社1社のユーザーと向き合い品質の高いサービスを提供することで、【Gozal】のファンとなっていただけるユーザーを増やしていければと思っています。
【Gozal】のいまとこれから
――【Gozal】の運用はどのような体制で行われているのでしょうか?
現在の運用体制としては全体の9割が開発チームで、技術開発や他社との共同開発、追加機能の実装、各関連省庁とのデータ連携、などにリソースを割いています。残りの1割のメンバーでカスタマーサポートを行っており、開発チームとカスタマーサポートの採用を今後は行っていきたいと考えています。
――【Gozal】の他にもメディア事業の【Gozal Media】やコンサル業も手がけられていますが、今後注力したい分野はありますか?
中小企業ユーザーにとって面倒な部分である「労務管理と各種支払・決済部分の効率化」を進めていきたいと考えています。
――今後ますますバックオフィス業務のクラウド化は大きな流れとして進んでいきそうですが、同時に競合する既存サービスの存在もあります。こうしたクラウドサービス市場の中で御社のポジショニングついてはどのようにお考えですか?
【Gozal】は、ビジネスの世界で挑戦するすべての方を「バックオフィス業務の悩みや迷い」から解放するサービスです。
他社のバックオフィスサービスと違う部分としては、会社情報や従業員、知財、株式などの状況をユーザーごとに解析し、「いつ/なにを/どのようにしたら良いのかを自動通知するサービス」を目指していることです。
中小企業の方にとってバックオフィス業務の最大の課題はこの「いつ/なにをしたら良いのかが適時に分からない」ということです。【Gozal】はその課題を解決するという1つの理念に基づいて、サービスの立ち位置を考えています。
さらなるUI向上への施策
――【Gozal】を実際に使わせていただいたところ、ユーザビリティがとてもよくて非常に作りこまれている印象を受けました。そこで最後にUIを開発する際に意識されたことを教えてください。
UI改善は現在も大きな課題です。今後もひたすらユーザーの声をお聞きし、使ってみることで獲得できる見識を積極的に反映させていきたいと思います。
またクラウドサービスとはいえ、実際にユーザーの方と顔を会わせてお話させて頂くことで重要な情報を獲得できていると思います。今後もユーザーの皆様と一緒にサービスを改善していければと考えています。
▲黒瀬瑛之氏(CTO/Co-Founder)
(【Gozal】UI)
さいごに
【Gozal】をご利用になったことがある方は、我々一般人からすれば難解な申請書の作成も項目を選択するだけでほぼ自動的に行われていくその使い勝手の良さに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
しかし派手なプロモーションよりも「すべての起業家をバックオフィス業務の悩みから解放する」というミッションのもと、徹底したユーザー志向でサービスのさらなるブラッシュアップを優先する高谷氏の姿勢こそスタートアップの本質と言えるのではないでしょうか。
人物紹介
高谷元悠氏
2011年、20歳の時に公認会計士試験論文式に合格。その後、大手監査法人に勤務。IPO支援、内部統制構築支援、M&A、上場企業の監査を担当。
サイバーエージェント主催のアントレプレナーイノベーションキャンプにて、チーム優勝。2014年1月に黒瀬とともに株式会社BECを設立。
(※HPより抜粋)
【株式会社BEC】
http://bec.co.jp/