オンラインでプログラミングを学べるサービス【Progate】は、近年注目を浴びているサービスの1つです。プログラミングと聞くと難しいイメージを持たれる方は少なくないはず。そんななかで実際にコードを書き、制作物を確認しながら実践的に学べる【Progate】は、これからプログラミングを学びたい人にとってうってつけのサービスだと言えます。
初心者でも楽しく学べるコンテンツは、どのようにして生み出されているのでしょうか。
今回は【Progate】を運営する株式会社【Progate】のマーケター兼エンジニアである南部旭彦(なんぶ あきひこ)氏にお話をうかがいました。
【Progate】について
――【Progate】という学習サービスを作る背景にはどのような想いがあったのでしょうか?
創業の話からすると、僕は大学三年生の時に今の副社長と起業しようという話になり、試行錯誤しながらビジネスモデルを考えていました。でもその時に僕たちはコードが書けなかったので、プロダクトが一個も作れなかったんです。単なる「起業ごっこ」に終わってしまって、プログラミングを勉強しないと話にならないと感じました。
その時に、ちょうど東大でプログラミングサークルを立ち上げようという話があって参加したんです。プログラミングをしたい仲間を集めて、エンジニアの人に教えてもらいながら受託制作を行っていました。受託制作を通して一つのプロダクトを世に送り出せたことが自信に繋がりました。
自分でも新しいものを創れるんだという自信と、もう一つは「プログラミングスキルがあったら生きていけるだろうな」というある種のバッファーをも持つことができたんです。
その経験からプログラミングの価値を知って、みんなもっとやるべきだし広めたいと考えたんです。でもその一方で、自分自身、学び始めたときは理解できないことも多く、とても苦しんだので、もっとプログラミングの入門のハードルを下げられたらとなと思っていました。
そういう想いから【Progate】は始まりました。
――【Progate】を利用するユーザーが実現できることについてお教えください。
【Progate】には「初心者から作れる人を生み出す」という理念があります。僕自身がプロダクトを1つ作り上げて自信になったので、そのような体験をユーザー様にはしていただきたいですね。
例えばコードを見て理解できるのと、実際にコードを書けるのとでは全然違うと思っています。さらにコードを書けてプロダクトを一つ作り上げるとなると、かなり差があると思っています。オンラインのサービスでありながら実際にプロダクトを作り上げる力を養える、そんなサービスにしたいですね。
【Progate】の事業展開
――プログラミング学習事業で成長していくために重視されていることはなんでしょうか?
大きく2つあります。
1点目は「学習コンテンツの質と量」ですね。質の部分をお話すると、ユーザーにとって「力のつくコンテンツ」を作り続けるというところを重視しています。またプログラミングには色々な言語があって、おのおの学びたい言語は異なります。そういった意味から、様々なユーザーのニーズを汲み取れるようにコンテンツの量を増やし続けていくことが大事だと考えています。
2点目は「ユーザーのリテンションを高める」という点です。学習に関して考えたときに、モチベーションがわかなくて、結局飽きちゃうことってどうしても多いと思うんです。ちょっと触ってみたけどつまらないからもういいや、とか(笑)
でも「ユーザーのモチベーション次第でしょ」と言ってしまったら終わりなので、使い続けやすいサービスであることは意識してますし、今後も最重要視していくつもりです。
――具体的にコンテンツの質をあげるためにどのようなことをおこなっているのでしょうか。
コンテンツの質は命だと思っているので、僕たちは質をあげるために3つことを意識して行っています。
1つ目は「初心者の気持ちを忘れない」ということ。
自分たちの成長と同時に、どうしても「初心者」から離れて行ってしまいます。でも、新しい技術を学ぶ時の心境や苦しみを絶対に忘れてはいけないなと思うんです。
昨年の10月から始まった「Progate School」では実際に【Progate】を触って学習しているところを観察させてもらって、どのあたりでつまづくのか等のユーザーの生の声を汲みとっています。
「Progate School」は参加者の方々の学びの場でもあるのですが、私達自身も初心者の気持ちを忘れないための学びの場になっています。
2つ目は「0ベースで徹底的に考えぬく」ということです。
僕たちは新しいコンテンツを作るときに、本屋で売っているプログラミングの入門書を読んだり、他サイトさんの学習コンテンツを見たりして調査を行っています。
調査の中でプログラミングの学習本を読んでいると、「なるほどな」とは思うものの、「本当にその順番で学んでわかりやすいのか?」「正直これってあんまり触れなくていいよね」ってツッコめたりすることが結構あるんですよ。
例えばhtmlを学ぶにしても、htmlタグの一番最初の書き方『DOCTYPE』から学ぶのって、本質的じゃないんですよね。でも入門書を読むと、どうしてもそういう所から学び始めてしまうので、結局ユーザーからするとどういう意味があるのかわからない事があります。
それよりは「h1」とか書いて、「文字が表示された!」といった体験の方が絶対楽しいんじゃないかと思います。既存の学習方法にとらわれ過ぎずに、0ベースでユーザーにとってわかりやすく、楽しいと思えるものを考えぬくことを大事にしています。
3つ目は「批判にさらすこと」です。
新しいコンテンツを作る過程で、「社内になげてフィードバックをもらうこと」を繰り返しています。1つのコンテンツを作るのに長くて1ヶ月程かかることがあるのですが、その間にひたすら「ここがわかりにくい」「これはいらないよね」「伝え方を変えよう」等のフィードバックが飛んできます。
100個から多い時には200個くらい変更するポイントがでてくるのですが、それに屈することなく改善しているので結構辛いです(笑) ただ、「フィードバックを活かして改善を繰り返すこと」が直接的にコンテンツの質に関わっていると考えています。
また、コンテンツが完成しているけれども1からやり直すこともあるんですね。
「jQuery基礎編」は既存のコンテンツだったのですが、3ヶ月程前に新しくリリースしました。
普通であれば新しいコンテンツを作ったほうがユーザーは集まるだろうと考えてしまうと思います。しかし僕達はコンテンツの質を重視しているので、既にあるコンテンツであっても批判し、いいものをつくりたいんです。コンテンツを批判するという点は、特に手を抜けない大事なポイントです。
――「世界一わかりやすく、楽しい学習環境を創る」といったメッセージを発しておられますが、グローバルな展開に向けて具体的な動きはございますでしょうか。
実際にはまだ動いてはいないのですが、創設当時から世界を目指したいというのはずっとあります。事業計画の中にも、常にグローバル展開についての計画は入っています。とはいっても、まだまだ日本でしっかり勝負しなければならないと思っています。グローバル展開の夢は常に持ちつつ、焦らず着実に拡大していくつもりです。
2016年は日本でしっかり勝負して、2017年から国際化の勝負になってきますね。
――2016年の抱負と合わせて、日本でどのように勝負をしかけるのかお聞かせください。
オフィスでの作業風景
具体的には、今年の4月からフリーミアムの形で【Progate】の有料版の提供が始まります。【Progate】は、現在は主に基礎編と応用編にわかれているのですが、基礎編は基本的に無料で提供し、応用編を有料で提供していきます。有料会員の方に関しては学べるコンテンツの量が多く、無料会員の方と比べると実践的なレッスンを大幅に増やしていきます。
昨年はプロダクトを磨き上げるというところが強かったので、2016年はまずは有料化に向けた準備と、コンテンツをもっと増やしていくことを頑張ります。ユーザーのリテンションを重視しているので、使い続けてもらうために、質にも量にもこだわってプロダクトの完成度をさらに高めていける年にしたいですね。
最後に
南部氏のインタビューのなかで、「初心者の気持ちを忘れてはいけない」という言葉が非常に印象的であり、コンテンツの質に徹底的にこだわる姿勢は【Progate】社のDNAなのだと感じました。
質の高いコンテンツは容易に作れるものではなく、いかにユーザーに寄り添えるかが重要で、ユーザー目線を徹底的に追求した先にあるものです。【Progate】を利用した際の「使いやすさ」や「学びやすさ」はそうした努力の結果生み出されたものなのでしょう。
着々とユーザーを増やし続ける【Progate】。【Progate】から輩出された「創れる人」が、日本のIT業界を引っ張っていく未来はそう遠くないかもしれません。
人物紹介
南部旭彦氏(株式会社 Progate)
1991/9/18生まれ。京都府出身。
東京大学法学部卒業。官僚を目指していたが、ビジネスで世界にインパクトを与えたいと思い、起業に興味を持つ。なかなかビジネスアイディアを形にできないもどかしさからプログラミングの必要性を痛感し、大学4年次からプログラミングを始める。スタートアップのプロダクト開発などに携わり腕を磨く。
Progate社では主にビジネス面を見つつコーディングも行なっている。
(※プロフィールはProgate社コーポレートサイトより抜粋)